サイドキョーコ
まゆみの生い立ちをなぞってみる。
高橋まゆみは実の父親を知らない。物心付く頃には父親は他界していた。母親は高橋家の長女。キョーコの父親と恋に落ち、親族の孟反対を押しきって駆け落ち同然で結婚してまゆみを授かった。が、不慮の事故で最愛の伴侶を失い、母親は実家に戻る以外に忘れ形見であるまゆみを育てる手段を持たなかった。実家での生活はまゆみの母親には辛い毎日だった。帰った時、家は長男である弟夫婦が継いでいて、両親は隠居の身。父は脳梗塞の後遺症で車椅子生活、母は認知症を患い常時介護を必要とする状態だった。
まゆみにとって叔父に当たる夫婦は『出戻り』の姉を疎んじて辛く当たる。まゆみの母親は離れで両親の介護をしながらまゆみと暮らした。まゆみも母親を手伝って祖父母の世話をやいた。それはそれで幸せな家族の雰囲気があり、まゆみは大好きな母親といられる事を何より幸せだと感じていた。が、まゆみの母親は慣れない介護に疲れはて、まゆみの事にまでは気が回らなかった。ただ、毎日繰り返さなければならない労働に追われ、まゆみに優しく接する事もしなかった。
祖父母が相次いで亡くなり、親子二人の生活が始まった。いや、始まるはずだった。
まゆみの母親は両親の介護が終わると魂が抜けてしまったようにぼんやりと過ごすようになった。まるでテ○ィ○アのように床にべったりと座っている。まゆみは母親の何も映さない瞳に一生懸命視線を絡めようとするが成功しない。それでもまゆみは諦めなかった。『お母さんの好きそうなもの』『お母さんに似合いそうなもの』を考えて思い付いてはいそいそと持って行く。「きっとお母さん、笑ってくれるから」と、自分に出来うる限りの事を一生懸命する事を惜しまなかった。しかし、時たま母親の目に力が戻ると傍で呼びかけるまゆみに「うるさいわね」といいながら払い除けるだけ。その時の母親の目は冷たくて、まゆみは怖くてではなく、悲しくて涙が溢れてくるのを押さえられなかった。
まゆみの叔父夫婦はそんな親子の姿見てを痛々しく思っていた。叔父は姉を許せない。だが、姪のまゆみは可愛いと思う。夫婦には子供がなく、夫婦はまゆみを望んだ。まゆみは自身の知らない間に亡くなった父親の姓から高橋に変わっていた。その事実は小学校に入学する直前に叔父から聞かされた。「お前の名前は高橋まゆみだよ。」と言われても困惑するだけで意味を理解するにはまゆみは幼なすぎた。
まゆみの生い立ちをなぞってみる。
高橋まゆみは実の父親を知らない。物心付く頃には父親は他界していた。母親は高橋家の長女。キョーコの父親と恋に落ち、親族の孟反対を押しきって駆け落ち同然で結婚してまゆみを授かった。が、不慮の事故で最愛の伴侶を失い、母親は実家に戻る以外に忘れ形見であるまゆみを育てる手段を持たなかった。実家での生活はまゆみの母親には辛い毎日だった。帰った時、家は長男である弟夫婦が継いでいて、両親は隠居の身。父は脳梗塞の後遺症で車椅子生活、母は認知症を患い常時介護を必要とする状態だった。
まゆみにとって叔父に当たる夫婦は『出戻り』の姉を疎んじて辛く当たる。まゆみの母親は離れで両親の介護をしながらまゆみと暮らした。まゆみも母親を手伝って祖父母の世話をやいた。それはそれで幸せな家族の雰囲気があり、まゆみは大好きな母親といられる事を何より幸せだと感じていた。が、まゆみの母親は慣れない介護に疲れはて、まゆみの事にまでは気が回らなかった。ただ、毎日繰り返さなければならない労働に追われ、まゆみに優しく接する事もしなかった。
祖父母が相次いで亡くなり、親子二人の生活が始まった。いや、始まるはずだった。
まゆみの母親は両親の介護が終わると魂が抜けてしまったようにぼんやりと過ごすようになった。まるでテ○ィ○アのように床にべったりと座っている。まゆみは母親の何も映さない瞳に一生懸命視線を絡めようとするが成功しない。それでもまゆみは諦めなかった。『お母さんの好きそうなもの』『お母さんに似合いそうなもの』を考えて思い付いてはいそいそと持って行く。「きっとお母さん、笑ってくれるから」と、自分に出来うる限りの事を一生懸命する事を惜しまなかった。しかし、時たま母親の目に力が戻ると傍で呼びかけるまゆみに「うるさいわね」といいながら払い除けるだけ。その時の母親の目は冷たくて、まゆみは怖くてではなく、悲しくて涙が溢れてくるのを押さえられなかった。
まゆみの叔父夫婦はそんな親子の姿見てを痛々しく思っていた。叔父は姉を許せない。だが、姪のまゆみは可愛いと思う。夫婦には子供がなく、夫婦はまゆみを望んだ。まゆみは自身の知らない間に亡くなった父親の姓から高橋に変わっていた。その事実は小学校に入学する直前に叔父から聞かされた。「お前の名前は高橋まゆみだよ。」と言われても困惑するだけで意味を理解するにはまゆみは幼なすぎた。