サイド蓮
「京子様、少し遅くはないでしょうか?」セバスチャンが腕時計に目をやりながら呟く。俺もハッとして楽屋の壁かけ時計を確かめると10分近く経っている。
「私、ちょっと様子を見てきます。」と部屋を出ていこうとする彼に「俺も行きますっ!」とついて部屋を出た。社さんも同様に続いた。
廊下に出ると女性達の声が化粧室の方から聞こえた。俺は胸騒ぎを覚えて、らしくなく速歩きでそちらに向かう。
「…顔を殴ったらどうなるかしら?」「それいぃんじゃない?敦賀さんの傍にもいられなくなるだろうし?」「目障りなのが居なくなったらいいものねぇ。」
その剣呑とした声音に思わず乗り込む勢いで歩みを進めるとセバスチャンに止められてしまった。彼は黙って首を横に振る。それを降りきろうとする俺に社さんが後ろから「そこは女子トイレだぞ。天下の敦賀蓮が痴漢行為は勘弁してくれ!」と焦り口調で声をかける。俺はハッとしてとどまり、小さく舌打ちをしてため息を吐く。どちらも敦賀蓮らしからぬ態度だ。
化粧室からまた違う声がする。「ちょっとハイエナ部員、さっさと仕事に戻りなさいっ!」
そこからあまり聞き取れずにいた。
「うわっ、あんた嫌味?まぁ、いいわ。それより敦賀さんを待たせたりしたらいけないでしや!さっさと戻りなさいよっ!」「う、うん…。」
「ほらほら、キビキビ歩くっ!」
そして「キャーっ!」というキョーコちゃんの叫びに焦りを感じた時、キョーコちゃんが後ろから押されたようによろめきながら廊下に出てきた。俺はとっさにその身体を支えて胸に納めていた。
「つ…っ、敦賀さんごめんなさい。遅くなってしまって…。」シュンと眉尻をさげるキョーコちゃんに「ちょっと遅かったから迎えに来たんだ」「ありがとうございます。あの、お待たせしてしまってすいません。」「大丈夫だよ。それよりどうかしたの?」出来るだけ優しく問いかける。「いえ、あの、別に何も…」
また化粧室から女性の声がする。「へぇ、叩けるんだ。いいわよ。私の顔に傷がついたらLMEの力であなた達を事務所ごと葬ってもらうから。それが無理でも、少なくとも敦賀さんには嫌われちゃうわね。あの人は人一倍後輩思いだから。(笑)」
一同は「えっ!」と固まる。そこに瑠璃子のマネージャーが現れた。「瑠璃ぃ、トイレにいつまでかかってるのよ。そろそろ移動よ。早くしてぇ。」「はぁい、すぐいくからぁ。」
元気のいい返事が返ってきて、皆ほっとした。
「京子様、少し遅くはないでしょうか?」セバスチャンが腕時計に目をやりながら呟く。俺もハッとして楽屋の壁かけ時計を確かめると10分近く経っている。
「私、ちょっと様子を見てきます。」と部屋を出ていこうとする彼に「俺も行きますっ!」とついて部屋を出た。社さんも同様に続いた。
廊下に出ると女性達の声が化粧室の方から聞こえた。俺は胸騒ぎを覚えて、らしくなく速歩きでそちらに向かう。
「…顔を殴ったらどうなるかしら?」「それいぃんじゃない?敦賀さんの傍にもいられなくなるだろうし?」「目障りなのが居なくなったらいいものねぇ。」
その剣呑とした声音に思わず乗り込む勢いで歩みを進めるとセバスチャンに止められてしまった。彼は黙って首を横に振る。それを降りきろうとする俺に社さんが後ろから「そこは女子トイレだぞ。天下の敦賀蓮が痴漢行為は勘弁してくれ!」と焦り口調で声をかける。俺はハッとしてとどまり、小さく舌打ちをしてため息を吐く。どちらも敦賀蓮らしからぬ態度だ。
化粧室からまた違う声がする。「ちょっとハイエナ部員、さっさと仕事に戻りなさいっ!」
そこからあまり聞き取れずにいた。
「うわっ、あんた嫌味?まぁ、いいわ。それより敦賀さんを待たせたりしたらいけないでしや!さっさと戻りなさいよっ!」「う、うん…。」
「ほらほら、キビキビ歩くっ!」
そして「キャーっ!」というキョーコちゃんの叫びに焦りを感じた時、キョーコちゃんが後ろから押されたようによろめきながら廊下に出てきた。俺はとっさにその身体を支えて胸に納めていた。
「つ…っ、敦賀さんごめんなさい。遅くなってしまって…。」シュンと眉尻をさげるキョーコちゃんに「ちょっと遅かったから迎えに来たんだ」「ありがとうございます。あの、お待たせしてしまってすいません。」「大丈夫だよ。それよりどうかしたの?」出来るだけ優しく問いかける。「いえ、あの、別に何も…」
また化粧室から女性の声がする。「へぇ、叩けるんだ。いいわよ。私の顔に傷がついたらLMEの力であなた達を事務所ごと葬ってもらうから。それが無理でも、少なくとも敦賀さんには嫌われちゃうわね。あの人は人一倍後輩思いだから。(笑)」
一同は「えっ!」と固まる。そこに瑠璃子のマネージャーが現れた。「瑠璃ぃ、トイレにいつまでかかってるのよ。そろそろ移動よ。早くしてぇ。」「はぁい、すぐいくからぁ。」
元気のいい返事が返ってきて、皆ほっとした。