撮影中***

「そんな事ばかりしてると誰にも好かれなくなっちゃうわよ?」
放課後の校舎裏。そんな軽口を言いながらまゆみが近づいてくる。みのるは少しばつが悪そうな顔をしてそっぽを向いた。(またみられたのか)
「あっ!今『またみられたのか』とか思ったでしょ?」
「なんだよ、お前はエスパーなのか?」今度はちょっと困ったような顔でみのるはため息混じりに抗議を試みる。まゆみがクスクス笑いながらみのるは頬を人差し指で突っついて「ここにちゃんと書いてあるんだから仕方ないじゃない(笑)」と返す。
まゆみがみのるを最初に見かけたのは、みのるに告白しにきた少女を袖にしているところだった。その少女は泣いていた。みのるは軽く『ごめんね(笑)』と言って踵を返してその場を去った。そしてたまたま通りかかったまゆみの横を通り抜けようとしのだ。まゆみはつい声に出してしまった。『泣いてる女の子を放置とはいただけませんね、色男。』
みのるはプッと鼻で笑って『俺は何も悪い事はしちゃいない。彼女の申し出を断っただけだよ。』と事も無げに言い放つ。まゆみは小さくため息をついて『色男にも事情や好みはあると想うけど、わざわざ泣かさなくても振るくらいはできるでしょう?』と言ってみる。みのるは両手を肩のところで開きお手上げというように肩をすくめて苦笑する。『俺にはむりだな。』
そしてまた歩き出す。まゆみはその後ろ姿を無言で見送った。後味の悪さは告白現場の一部始終をみていたせいだろう。
それから1ヶ月ほどしか経ってないが、みのるはあちこちで告白され、その度に少女を泣かせている。それをなぜかまゆみは目撃してしまう率が多い。いい加減同じような光景に飽きてしまいそうな程だ。
「あんた、毎日告白されてんじゃない?誰とも付き合わないの?実は家に帰れば嫁が居るとか?」
「んなわけないだろ。俺まだ学生だぜ。そんな甲斐性あるわけないだろう?」
「ならなんで誰にも靡かないのさ?」
「あの子達俺の何を気に入って『恋人』になりたいのかが解らないからさ。」
「はっ?」
「だって、初めて話をするのに『好きです』とか『付き合って下さい』とか言われても無理でしょ?」
「はぁ、まぁそりゃ、そうか…。あんた見た目いいからねぇ。でも、彼女達も私が見た限り粒揃いだったじゃないの。可愛いとか思わなかったの?」
「見た目だけで好きになる筈がないだろう。」みのるはごもっともな事を言いながら寂しそうな顔をした。