サイド奏江
敦賀さんとキョーコの復帰記者会見の後、会議室までキョーコを迎えに来るようにと椹主任に言われていた。二人ともスケジュールに余裕を持たせたとはいえ、今をときめく売れっ子俳優の敦賀さんは早速幾つか仕事で出る事という。キョーコの方は元々ラブミー部の雑用もスケジュールに組み込まれているので、私と一緒に業務に入る。
記者会見の様子はモニターで見ていたけど、心ない記者からのバッシングにキョーコは必死に耐えていた。隣に座る敦賀さんはキョーコをフォローしようとしていたがそう簡単にはいかない。両サイドの主任さんたちも為す術なし。最後はみな揃って頭を下げて逃げるように会見場を後にした。あの状況では最善の対応だったと思う。私は会議室に急いだ。きっとあの子は泣けずにいる。他人の不の感情に人一倍な敏感親友は怖くて仕方ないはず。でも、他人に気を使うあの子は周りに気を使わせないように俯いて我慢するしか出来ないだろう。早く、早く行って解放してあげなければっ!そう思った時には全速力でビルの中を走っていた。会議室の手前で息を整え、平静を装って扉をノックする。開いた扉の中から社さんが人懐っこい笑顔で私を招き入れてくれた。そこで見たのは私が想像してなかった光景だった。
キョーコは敦賀さんの胸に顔を埋めて泣いていた。敦賀さんはそんなキョーコを大事そうに抱きしめていた。敦賀さんがキョーコの頑なな心を解放してしまったのがすごく悔しい。それは私の役目…だったはず、なのに…。
椹、松島両主任は私を見つけてホッとした顔をした。「琴南くん、最上くんをたのんだよ。」「社、そろそろ連は移動の時間だからよろしくな。」といい残して会議室を出ていった。
「連、悪いがそろそろ時間だから…。」社さんは敦賀さんの肩に手を置いて声をかける。
「キョーコ、あんたは私とラブミー部の仕事よ。」と私は出来るだけそっけなく言い放つ。
敦賀さんはキョーコの背中をトントンと叩いて「大丈夫?」と声をかけ、「すいません、彼女が大丈夫ならすぐ行きます。」と社さんを見る。
キョーコは敦賀さんの声にハッとして顔を上げる。「ごめんなさい、取り乱して。私、大丈夫です。」
無理に笑うあの子の頭を敦賀さんがクシャっと撫でて立ち上がらせて私の方を向かせる。「うん。じゃぁ、俺は行くから。琴南さん、彼女をお願いします。」
満面の笑みは今まで見たものとは違う、柔らかいものだった。
敦賀さんとキョーコの復帰記者会見の後、会議室までキョーコを迎えに来るようにと椹主任に言われていた。二人ともスケジュールに余裕を持たせたとはいえ、今をときめく売れっ子俳優の敦賀さんは早速幾つか仕事で出る事という。キョーコの方は元々ラブミー部の雑用もスケジュールに組み込まれているので、私と一緒に業務に入る。
記者会見の様子はモニターで見ていたけど、心ない記者からのバッシングにキョーコは必死に耐えていた。隣に座る敦賀さんはキョーコをフォローしようとしていたがそう簡単にはいかない。両サイドの主任さんたちも為す術なし。最後はみな揃って頭を下げて逃げるように会見場を後にした。あの状況では最善の対応だったと思う。私は会議室に急いだ。きっとあの子は泣けずにいる。他人の不の感情に人一倍な敏感親友は怖くて仕方ないはず。でも、他人に気を使うあの子は周りに気を使わせないように俯いて我慢するしか出来ないだろう。早く、早く行って解放してあげなければっ!そう思った時には全速力でビルの中を走っていた。会議室の手前で息を整え、平静を装って扉をノックする。開いた扉の中から社さんが人懐っこい笑顔で私を招き入れてくれた。そこで見たのは私が想像してなかった光景だった。
キョーコは敦賀さんの胸に顔を埋めて泣いていた。敦賀さんはそんなキョーコを大事そうに抱きしめていた。敦賀さんがキョーコの頑なな心を解放してしまったのがすごく悔しい。それは私の役目…だったはず、なのに…。
椹、松島両主任は私を見つけてホッとした顔をした。「琴南くん、最上くんをたのんだよ。」「社、そろそろ連は移動の時間だからよろしくな。」といい残して会議室を出ていった。
「連、悪いがそろそろ時間だから…。」社さんは敦賀さんの肩に手を置いて声をかける。
「キョーコ、あんたは私とラブミー部の仕事よ。」と私は出来るだけそっけなく言い放つ。
敦賀さんはキョーコの背中をトントンと叩いて「大丈夫?」と声をかけ、「すいません、彼女が大丈夫ならすぐ行きます。」と社さんを見る。
キョーコは敦賀さんの声にハッとして顔を上げる。「ごめんなさい、取り乱して。私、大丈夫です。」
無理に笑うあの子の頭を敦賀さんがクシャっと撫でて立ち上がらせて私の方を向かせる。「うん。じゃぁ、俺は行くから。琴南さん、彼女をお願いします。」
満面の笑みは今まで見たものとは違う、柔らかいものだった。