「まだ早い、今すぐにそれを許す訳にはいかねえな。」ローリーはキョーコの申し出を受け入れはしなかった。
「どうして…ですか?」ローリーならきっと自分の言わんとしている事を解ってくれると、キョーコは信じていた。そして否定されたりしないと。しかし、キョーコの願いは叶えられなかった。
蓮はローリーの返答に内心ホッとしている自分に驚く。知りたいというキョーコの強い意思は羨ましい程で、自分には出来ない事をそれが当たり前と言わんがばかりにしたいと口にするキョーコ。その姿は蓮には凄く眩しく映った。
「私、私は京子をもっと知りたいんです!」
「あの資料だけじゃ足りねえか?」
「いえ、幾つかの番組を観せていただきましたが…、違うものが見たいんです。」
「ほう。」
「京子の人となりを…。どこで生まれてどんなどころで育ったのか、誰と過ごして何を感じていたのか…。足跡を辿りたいんです!」
「それは京子の足跡なのかね?それとも最上キョーコの足跡なのかね?」
「両方です。京子=最上キョーコなら、京子を演じるために最上キョーコを知る事は必要条件だと思いますっ!」一生懸命言い募るキョーコに、しかしローリーは色好い返事を返そうとはしなかった。
「蓮、お前はどうだ?」
「…っ、俺は…、出来れば知りたくありません。」
「…なんで?」キョーコは驚きを隠そうともせず、隣の蓮を見上げた。
「俺は今のまま『敦賀蓮』を演じる方が演り易い…と思います。」
「そうか。俺もその方がいいと思う。」
「社長…私は…」さっきまでの勢いを削がれてしまったキョーコは俯いたまま続ける。
「私はまだ『京子』が解らない。何も掴めてないんです。何を観ても読んでも自分の中にイメージする事ができません…」
「京子さん…?」
「…っ、敦賀さんは…敦賀さんはもう『敦賀蓮』なのに、私はまだ『京子』に出会う事さえ出来ていない…」キョーコの膝の上でキュッと握り合わされた手が微かに震えていた。蓮はキョーコの緊張を少しでも和らげようとその手の上に掌をかさねる。
しかしキョーコはキィっと蓮を睨み付けてその手を払う。「敦賀さんはいつも余裕があって…そうやって何でも卒なくこなしてしまえるから…、私が一生懸命になっても掴めないものをあっさり手に入れてしまうから…、私はいつも取り残されて…追い付けなくて…悔しいっ!」
そんなキョーコにローリーは『ちゃんと京子じゃねえか』と内心ほくそ笑んだ。
「どうして…ですか?」ローリーならきっと自分の言わんとしている事を解ってくれると、キョーコは信じていた。そして否定されたりしないと。しかし、キョーコの願いは叶えられなかった。
蓮はローリーの返答に内心ホッとしている自分に驚く。知りたいというキョーコの強い意思は羨ましい程で、自分には出来ない事をそれが当たり前と言わんがばかりにしたいと口にするキョーコ。その姿は蓮には凄く眩しく映った。
「私、私は京子をもっと知りたいんです!」
「あの資料だけじゃ足りねえか?」
「いえ、幾つかの番組を観せていただきましたが…、違うものが見たいんです。」
「ほう。」
「京子の人となりを…。どこで生まれてどんなどころで育ったのか、誰と過ごして何を感じていたのか…。足跡を辿りたいんです!」
「それは京子の足跡なのかね?それとも最上キョーコの足跡なのかね?」
「両方です。京子=最上キョーコなら、京子を演じるために最上キョーコを知る事は必要条件だと思いますっ!」一生懸命言い募るキョーコに、しかしローリーは色好い返事を返そうとはしなかった。
「蓮、お前はどうだ?」
「…っ、俺は…、出来れば知りたくありません。」
「…なんで?」キョーコは驚きを隠そうともせず、隣の蓮を見上げた。
「俺は今のまま『敦賀蓮』を演じる方が演り易い…と思います。」
「そうか。俺もその方がいいと思う。」
「社長…私は…」さっきまでの勢いを削がれてしまったキョーコは俯いたまま続ける。
「私はまだ『京子』が解らない。何も掴めてないんです。何を観ても読んでも自分の中にイメージする事ができません…」
「京子さん…?」
「…っ、敦賀さんは…敦賀さんはもう『敦賀蓮』なのに、私はまだ『京子』に出会う事さえ出来ていない…」キョーコの膝の上でキュッと握り合わされた手が微かに震えていた。蓮はキョーコの緊張を少しでも和らげようとその手の上に掌をかさねる。
しかしキョーコはキィっと蓮を睨み付けてその手を払う。「敦賀さんはいつも余裕があって…そうやって何でも卒なくこなしてしまえるから…、私が一生懸命になっても掴めないものをあっさり手に入れてしまうから…、私はいつも取り残されて…追い付けなくて…悔しいっ!」
そんなキョーコにローリーは『ちゃんと京子じゃねえか』と内心ほくそ笑んだ。