大切なもの (14)

ｻｲﾄﾞｷｮｰｺ

「俺の名前は『敦賀蓮』らしい。」
困惑して返事が出来ずにいた私にその人は柔らかく話しかける。

「敦賀…、さん？」
「うん、そうらしい。ここのお医者さんや看護士さんがそう読んでいるから。君の名前は『京子』というそうだよ。」
「『京子』ですか？あの、名字は…？」なんで私は名前だけなのか。ま、まさか、『敦賀京子』じゃないわよね？

「解らないんだ。俺も目が覚めたら病室に寝かされていて、名前が『敦賀蓮』だと教えられたんだ。俺達は事故にあったらしいよ。それで二人ともこの病院に運ばれて。目立つ外傷はないらしい。ただ、事故当時のショックで意識を失っていたらしいよ。それで俺の方が先に覚醒したんだ。」
「そう、なんですか…。そんな状態なのにご迷惑おかけしちゃってすみません。」と頭を下げたら、「大丈夫、迷惑なんてかかってないよ。」とまた軽く頭を撫でてくれる。
「事故って…？」
「あぁ、看護士さんの話によると、俺は君と二人でお忍びドライブデート中だったらしい。で、休憩に寄った駐車場でトラックに追突されたんだそうだよ。」
そんな事故にあったんだ。無傷って奇跡的なんだろうなぁ。
「あ、君が目覚めたら連絡するように言われてたんだ。お医者さんを呼ぶね。」
ナースコールで私が覚醒し事を敦賀さんが伝えると程なくお医者さんが看護士さんを従えてやってきた。