大切なもの (6)

ｻｲﾄﾞ蓮

「…えっ？」
俺の驚きと疑問の声に医師は眉をひそめる。

「あの、俺の車には同乗者が居たんですか？しかも女性？」
そう聞く俺に看護士がいう。
「何を仰ってるんですか、敦賀さん。京子さんとお忍びドライブデート真っ只中で事故に巻き込まれたんじゃないですか。あ、まだお二人の仲はオフレコなんですね？きゃぁぁぁぁっ、なんだか素敵なロマンスの香りがするわっ！」

医師の咳払いで看護士の彼女はビクッと固まり、後ずさる。
医師はとりあえず脳波と心電図の検査を受けるように俺に告げ、看護士を従えて部屋を出ていった。
敦賀さん、京子さん、お忍びドライブデート…

俺の理解の域を軽く超えた単語が俺の頭の中で舞い踊る。痛い、頭が痛い…。

急に襲ってきた激しい頭痛に遠退いていく意識の中で、俺は不安と困惑を抱える事しか出来なかった。