注)長文。

パートナーと出会ったのは新幹線の中でである。


2001年冬
それまで、北海道に住む彼と4年間の遠距離恋愛をしていたのですが、
その彼は、勤める病院の研修医の女性に鞍替えして、
私はまんまと振られ、この4年は何だったのだろうかと、
憔悴[しょうすい]しきっていた。


この研修医の女性が曲者で、
私から彼を奪ったくせに、まだ奪い足りなかったのか、
私の携帯電話の番号をピンク系のサイトに登録するという、
おそろしいことをする女だった。
(こんなドクターに診てもらいたくないね)



私の携帯電話は、キモイ男からの電話がジャンジャン鳴り続け
傷心&精神的苦痛でしばらく頭がおかしくなっていた。


慣れって恐いもので、

それにもだいぶ慣れてしまった私は、
電話に掛かってくる男どもをからかうのが楽しくなって、
時には人生相談などやっていたら、
その中でも若い美容師が気になり、毎日のように話をするようになって数ヶ月...
その美容師がいる大阪に、2001年ホワイトデーに会いに行くことに したのである。


自分より 7歳も年下の若い美容師は、夢や希望や目標を持っていて、
田舎から大阪に上京していた。
そんな真っ直ぐでキラキラしたものを
持ったことのない私には、眩しく見えたんだな。

まぁ、その眩しさも、気のせいだったのだけれど...
結局、綺麗ごとを言いながら、年上女性にお金をねだっていたわけよね。
バイクを買うお金を補助してくれとか言われて、70万くらい
出しちゃった自分もアホでしたね。

私は精神的ダメージから復帰したと自分では思っていたのですが、
まだ正常には戻ってなかったんだね。



さて、ここからが、パートナーとの初めての出会い。

その美容師と会った帰りの新幹線、新大阪⇔東京でのこと。


新大阪のマクドナルドで大量に買い込み、
新幹線に乗込んで猛烈にマックを食べていた。


新幹線では、混んでいない時は、誰かの隣になるのが嫌な人は、
2列シートの片方に座り出し、そこに一人ずつ埋まってしまうと、
人は3列シートに座りだす。


乗った新幹線は、ガラガラだったので、2列シート片方に座り
もう片方に荷物を置いて、人の目も気にせず、マックをパクついていたのである。

すると、「隣、空いていますか?」と尋ねて来た男性がいた。
つまりその人が、パートナーである。



私は正直 腹が立った。

誰とも知らぬ男性が、
他の席も充分空いているのに、
一人マックをパクつきたいのに、
パクつかなくても、のんびり一人にさせて欲しいのに、
よりによって、私の隣なのだと。


思いきり、態度でNO~!!! と表していたのだが
なんとも失礼なことに、私の返事を聞く前に、
パートナーは ズンっ、と隣に座ったのである。



秘密にすれば、するほどヒトは気になる動物で、
拒む私の本をどうしても見たくなってしまったらしい。

更に、謎とか秘密とかあると、その事と同時に、
その人自体も気になってしまうのも、ヒトとい動物の特性なのだ。

どうやら、隣の男性は、私の本も気になるが、
猛烈にマックを頬張って、そうかと思えば爆睡し、ヨダレまで垂らし、
目覚めたら愛想よくニコニコし、つまらない事を秘密にする
不思議な私に興味を持ってしまったらしい。


ふと、隣の男性の本に目を凝らすと、内容は建築関係の本ではないか。

丁度、実家は新築を立てている時で、
家族であーじゃない、こーじゃないと家について
話し合っている時だった。

そのことを話すと、隣の男性は建築学部を卒業し、ゼネコンで働いているとここと。私に建築の本を見せてくれるのだったが
本の内容は難しすぎて、ちっとも分からなかった。

隣の男性がなぜ大阪に行ったかとといえば、
地元大阪で友人の結婚式があったのだという。

◆男は、結婚式からの帰りに、
隣に座る女はブライダルプロデュースの本を読み

◆女は、実家の新築を建てている時に、
隣の男が建築の本を読み

お互いの持っている知識で、知らぬ間に話が盛り上がってしまった。

神奈川県に住んでいた私は、新横浜で降りる予定を
東京にして話をし続けていた。

終点の東京に着いても、話が尽きなかった私達は
メールアドレスを交換して、また会いましょうと言って
ホームで反対方向に歩き出した。


会う気もないのに、また会いましょうね、という社交辞令が
大嫌いな私は、その日のうちに「また会おう」と書いて来た
メールに「またという日はありません」と返した。

そうやって、具体的に次に会う日が決まって、

それから数年の付き合いを経て、
籍を入れて更に数年で今に至る訳だが、

新幹線の隣の人が、今もずっと私の人生の隣にいてくれる不思議がここにあります。


そんなパートナーの誕生日はあと数日。
不思議なことに、私の父と同じ誕生日です。


ムカついた私は、ささやかな抵抗として、
思い切りハンバーガーの匂いをプンプン漂わせながら、
そのまま食べ続けてやったのだが、、、
男性は他の席には移動してはくれなかった。


しばらくすると、さすがに食べ過ぎた私は、眠くなってしまい、
気が付いた時は、私は大きく首をもたげていた。


それも、隣の席に座った男性の肩に、
おもいっきり頭を乗せて、ヨダレまで出ていた。



そんな醜態に自分でもビックリして、すぐさま深々と謝った。
隣の男性は、少しも怒っていなく、
それがまた自分の醜態を強調させ、恥ずかしいのなんの。

再び睡魔が襲ってくることを恐れた私は、
持ってきていた本を読むことにした。


おとなしく本を読んでいた私だったのですが、
飽きてきて、隣の男性が読んでいる本がしきりと気になって
自分の本は読まずにペラペラと捲るだけだった。

先程、謝った時に少しの返事程度を話ただけの、寡黙な隣の男性は
私の読んでいる本は何の本かと聞いてきた。


拠りによって、私の読んでいる本は、
勤務しているクリニックが休館の時に通っていた、
ブライダルプロデュースのくだらない本で、男性が興味があるとは思えなかった。
見せてくれという、隣の男性に、本の概要だけ話をした。