デビュー以来大好きだったレコーディング。
作品を作り上げる戦場だけれど、私にとっては
『超贅沢なカラオケボックス』
でもあった。
それくらい、スタジオで歌うことが好きだった。

2000年、体調不良のまま臨んだレコーディング。
そのまま世に出そうとの声もあったけど、
全く納得のいかない出来に、私自身がストップをかけた。
プロとして、このまま作品を残すことが出来なかった。

4年前から毎年1回、体調の回復を確認するため、
スタジオで歌わせてもらっていた。
その頃から、自分では もう大丈夫じゃない?!って
思いがあったけれど、OKは貰えなかった。

毎年トライした。
去年まで3年間、毎年ジャッジされるNGに、凹みそうに
なったこともあった。
もう…無理なのかもしれない と。

そして今年。
この日が決まってから、神経はずっとスタジオに向いていた。
日々の生活も、この日に照準を絞った形になった。
ブログの更新すら出来なかった。

デビュー以来お世話になった方々が集まって下さった。
心強かった。

ガラスの向こうのスタジオに向かう。
昔から散々やってきたこと。
平気…なつもりだった。

脚がガクガク震えている。
脚の震えが声にも伝わっている。
う…まずい。

10年という歳月、4年前からOKが貰えない怖さが
私の身体を震えさせていた。

『いい感じですよ』
トークバックで返ってきた言葉に救われた。
その一言で、『超豪華なカラオケボックス』に変わった。

歌っている途中、嬉しさと感謝の思いで
涙が出そうになったけれど、
一度泣いてしまうと、歌う声に回復するまでに
時間がかかってしまう。
必死でこらえた。

やり遂げた充実感と、ほどけた緊張感。
スタジオからの帰路は、完全に気が抜けてしまっていた。

やっと…この日を迎えることが出来た。
私を見捨てず、長い間待っていて下さった、
皆さんのお蔭。

感謝の思いを胸に、新たな一歩を歩みだす私。
焦らず、ゆっくり一歩づつチョキ