9月に入り、早稲アカから何度も着信。

 

あぁ、そうか。

中3生の勧誘タイミングは

おそらくこの夏休み明けが

最後なんだな。

 

退塾してから約1年、

ときどき特訓やら首都圏オープンやらの

模試の案内ハガキは届いていたし

営業電話だろうなという着信もあった。

スルーしてたらそのうち止んだ。

けど今回はなんか違う。

毎日毎日かけてきてる。

 

留守電にメッセージも入っていたし

たまたま出られる日があったので

思いきって出てみた。

授業や面談でお世話になった先生だ。

簡潔に、かつ正直に伝える。

 

「全日制だと体力的に難しいので

通信に出願することになりました」

 

早稲アカへの復帰見込みはゼロだと

この言葉で伝わっただろう。

 

「そうですか。なんにせよ

本人に合った環境というのが

いちばんだと思います」

 

よどみなくスラスラと

そんな無難な励ましを返された。

 

けれど本人の意思と関係なく

突然去ることになった絵衣のことは

心の片隅で気にしてくれていたかもしれない。

 

「お世話になりました」

 

あらためて深く御礼を述べて電話を終えた。