子供が20になったらみんなでたわらやで飲みたいね。
そんな小さな夢は、儚く消えてしまいました。



インフルに魘されて3日ぶりにあけたFBに
たわらやの堀田さんが2018.12.31にお亡くなりになったとの書き込みが…
悪い夢でも見てるんだろうか
閉じる。寝る。起きる。

また開いて見る。

堀田さんが亡くなったの投稿が増えていた。
どうやら夢ではないらしい。
熱で頭おかしくなったんだろうか。
慌てて主人を呼ぶ。主人も飛んできた。
主人に話して、これが本当だと知って、気を失ったようにまた眠りにつく。

熱が下がってきて頭がクリアになると
じわじわと現実味を増して悲しさが溢れてくる。
今年は私が試験で毎年欠かさず行っていた結婚記念日をたわらやで過ごせなかった。
なんで行かなかったんだろう。
悔やまれてならない。
主人になんでいかなかったんだらうね。て話したら「仕方ないでしょ」と言われわかちあえないこの感じにまた一人切なくなる。

横濱ワインバルたわらや、そしてオーナーの堀田さんとの付き合いはかれこれ5年になるだろうか。
最初は私の後輩が「ワインなら山梨です」と連れてきてくれたお店で、
落ちついた店内と、国産ワインがこんな美味しいなんて目から鱗だったこと、お料理も何食べても美味しくて…事あるごとに使わせていただいてました。

この時まだ私は保険屋としても駆け出しで、とりあえず名刺だけでも…とお渡ししようとしたところキッパリ拒否。
そういうのだったら結構です!と。
堀田さんは本当白黒ハッキリしてるからなあ。今ならわかるけど出会ったばかりの頃はその一言に落ち込んで、主人に、こんなこと言われた…としょんぼりして帰ったわけです。

そしたら主人が
「本当に気に入ってるならそれでも通いなよ。そこで行くのやめたら、仕事欲しさに通ってたて自分で言ってるようなものだよ。仕事が欲しいから通っていたの?違うでしょ。好きだから通ってたんでしょ」と。

それもそうだなと思って、ちょっと仕事関係の接待とか落ち着いて飲みたい時、美味しいものが食べたいとかワイン飲みたいなんて希望があると、おススメあるよ!とたわらやにお連れしてました。

最初は嫌な顔されてましたけど、ある時、カウンターで飲んでいたら
「ミハルさん、あの車は名車だよね。実は僕も乗ってたんだよ。スピーカーもいいでしょ。」とその頃FBのアイコンは私の愛車のレガシィで。
名前で呼ばれて一気に距離が近づいたのとそのあとに友達申請をいただき、実はレーサーだったと知り実はドラムも弾けちゃうなんてことも知り…

カウンターで女同士で飲んでたらワインのテイスティングの仕方を教えてくれた日の光にかざしたワインの美しさや、たまたま入れたボトルが36番!3/6は主人の誕生日、ラッキーナンバーだったりとか今日はね、これ食べて!とメニューにないものが出てきたりとか。サイボクハムがなぜここに!?とかアジフライがレモン塩に変化してグレードアップした日のこととか…

ワイン🍷好きなんだからさぞ詳しいんでしょ。と言われますが、全く詳しくないのは、堀田さんが選ぶワインが一番正解だから。
私はワインリストから選んだこともなければ、これ食べたい!とか白が飲みたい、赤が飲みたい、堀田さんおススメは??だったので。

夫婦で記念日はほとんどたわらやでお祝いした。
2015年から
2016年は予約せず行ったら満席で「ごめんね、この二人大事なお客さんなの詰めてくれる?」て無理矢理席作ってくれた。これが私たち夫婦の10周年だった。
2017年は予約した。
そしたら去年もその前も来てるよね?なんか記念日なの?と聞かれて結婚記念日!と話したら
なんとケーキを準備してくれた。
名前漢字間違えてて爆笑。いーのいーのちゃんと受け取ったもん!
2018年は私が試験でその次の週旅行で行けぬまま、その数週間後に堀田さんは帰らぬ人に。
2018年、9月に、仕事もいただいた。
思えば、こういうのならいいから!と拒否されて4年ごし、ついにお客さまになっていただけたのです。
「これからは損保の話あったら全部ミハルさんに言うね!!実は俺もさ、昔やってたんだよ、代理店!同じ会社で笑笑」と。
嬉しかったね。
金額とかじゃない。
あの堀田さんと損保の話しながらワインをのんでいる私を4年前の私は全く想像できなかった。
そして大事に思っている人から大事に思っているものの保険を預かれるなんで保険屋冥利に尽きます。
信念をもって仕事をしていて良かった。そしてそれが相手に伝わって本当良かったと思えた瞬間でした。

一昨年は山梨に遠足にも行った。
息子くんのキーボードと堀田さんのドラムのセッションもワインもお料理も美味しかった。楽しかったなあ。



その年の夏、私のお客様が亡くなって、私のお客様に私がたわらやご紹介したご縁でそのお客様もたわらやをご贔屓にしてくださったのだけど、訃報をお伝えしたら、ご自宅にお線香あげに行けました。ありがとうございます。と連絡をいただいた。
そして、年末最後のメッセージもこのお客様のことでした。

ミハルさんこんばんは(^^)
今日は〇〇さんの職場の忘年会でした。
去年は〇〇さんが幹事だったんですが…。
職場で倒れた時の話などを聞きました。
〇〇さんが亡くなってもたわらやで忘年会をやって頂いて本当に有り難かったです。

と。このあとすぐにでも伺えば良かった。そしてそのお客さんの話を二人でしたら良かった。
常連のお客さんを何より大切にしてくださいました。いつも居心地が良かった。

何か勘違いしてる人が多いのかもしれません。
お客さんに一生寄り添えるのは保険屋だけではない。
現に、たわらやは、私の「とっておき」のお店でずっと一緒に歩んで、私を見守り寄り添ってくれたお店だったから。


谷川俊太郎の
あなたはそこに
が浮かんだので引用します。
私ももう少し頑張ったらそちらに参ろうと思います。
美味しいワインがまた飲めるといいなあ。
勿論、堀田さんのお任せで。
堀田さん本当にありがとうございました。
また会える日まで。
そして、たわらやに一緒に行ってくださった皆さん、ありがとうございました。


あなたはそこに

あなたはそこにいた 退屈そうに
右手に煙草 左手に白ワインのグラス
部屋には三百人もの人がいたというのに
地球には五十億もの人がいるというのに
そこにあなたがいた ただひとり
その日その瞬間 私の目の前に

あなたの名前を知り あなたの仕事を知り
やがてふろふき大根が好きなことを知り
二次方程式が解けないことを知り
私はあなたに恋し あなたはそれを笑い飛ばし
いっしょにカラオケを歌いにいき
そうして私たちは友達になった

あなたは私に愚痴をこぼしてくれた
私の自慢話を聞いてくれた 日々は過ぎ
あなたは私の娘の誕生日にオルゴールを送ってくれ
私はあなたの夫のキープしたウィスキーを飲み
私の妻はいつもあなたにやきもちをやき
私たちは友達だった

ほんとうに出会った者に別れはこない
あなたはまだそこにいる
目をみはり私をみつめ 繰り返し私に語りかける
あなたとの思い出が私を生かす
早すぎたあなたの死すら私を生かす
初めてあなたを見た日からこんなに時が過ぎた今も