ゆうくんが帰って行く後ろ姿を、きょとんと見送っていたら、まーくんに軽くどつかれた。

「手ぇなんか繋いじゃって。付き合いたてのカレカノかよ」

えぇ?何言ってんの。
小さい頃の延長じゃんか。
そう口を尖らせると、まーくんが眉を上げ、半ば呆れたような顔で俺を見た。
だから説明してあげた。

「ゆうくん、寂しかったんじゃない?だってほら、ずっと三人で遊んでたのに途中からゆうくんだけ離れたわけでしょ」
「子どもの頃の話だろ。学年も違ったし、一緒だったのは小学校くらいまでなんだから、しょうがなくね?」
「だって俺たちだけ…こんなんなったし」

声が小さくなる。それとともに、耳が赤くなるのが自分でもわかった。

「こんなん?って、どんなん?」

わざと聞いてるだろ。
まーくんの目が笑ってる。

「……こんなんは、こんなんだよ」
「え〜、ちゃんと教えてよ!」
「わかんないの?バカなの?」

いい加減恥ずかしくなって、ぷいとそっぽを向いて歩きだそうとした。と、ふわっと空いている方の手で肩を抱かれた。

「怒んないの!」

ほっぺたがくっつきそうな距離で囁かれる。
近い、近いってえ。顔どころか、首まで赤くなってしまいそう。

「こんなとこでっ、もぉ…」
「映画観よっか」
「へっ?」

その言葉に胸がときめいた。
今日はもう予定がなくて、家に帰ってゲームでもしようかと思ってたんだ。
まーくんの今日の家庭教師先は、いつもだとご飯までご馳走になってくるから、まあまあ遅いんだよね。

「お昼ごはん、食べてないんじゃないの?」
「大丈夫だいじょぶ」

心配してるのに、まーくんは「でっかいポップコーン買うから」とか言ってさあ。
…なんて、ぶつぶつ文句を垂れつつ、頭の中ではどの映画を観ようかとワクワクしてる俺がいる。
まーくんの腕にぶらさがるようにして歩いた。

流行りのアクション映画を観て、街をブラブラして、ラーメン食べて帰る。

栄養のバランスとか全然考えてないな。
でもこういうのもいいよね?

ゆうくんに悪いことしたなぁと気がついたのは、アパートにかえってからだった。
ごめんね、ゆうくん。