さっそく実践。
次の家庭教師の時に質問してみた。

「山ちゃんは、サッカー以外だと何して遊ぶのが好きなの?」

山田くんがハッと俺を見た。
やった!初めて目が合ったかも。
って、違う!まーくんの「山ちゃん」呼びが移っちゃって、山田くんが驚いたんだって。もー、まーくんのせいだからね!

「あ、いや、えーと…」
「ゲームかな」

今更呼び直すのもとどうかと少し焦る俺に、山田くんは迷いない様子で答えてくれた。
ゲームか!俺の得意分野じゃん。
俺は心の中でガッツポーズをして、オンラインゲームのアカウントを教えてもらった。

よーし!
時間外で一緒に遊ぶぞお!

テンション上がる俺と比べると、山田くんはだいぶ冷静だったけど。いいんだ、少しでも親しくなれれば無問題。


アパートに帰ってパソコンの前でコントローラーを手に、約束した時間を待った。
そわそわする俺を、すぐ隣でまーくんが課題をやりながらも、じっと見てる。

「かずさぁ、そのゲームやれんの?」
「いちおー、やった事はあるもん」
「いちおー、ねぇ」

……そうなんだよな。
山田くんが好きなゲームは、FPS。
チーム組んで敵と銃撃戦をするタイプで、俺はあんまし得意とは言えないんだよね。
前にやってた時もそこそこの成績しか出せなくて、やめちゃったもん。
いつもはRPGとか、マリオとかパズドラとかやってるから、足を引っ張るだけで終わるかも。

そしていよいよマッチングしてゲームが始まった。いつもより僅かにテンション高めの山田くんの声が聞こえてくる。
ドキドキするなあ!


山田くんはめちゃくちゃ上手かった。
そしてもう一人の仲間も山田くんの知り合いみたいで、やっぱりめちゃくちゃ上手かった。

そして、まーくんの予想は的中していた。
俺はもう、ついて行くのが精一杯で、文字通り手に汗握る展開になって、コントローラーがぬるぬるしちゃった。

何度も死んじゃって、もう俺のことは放置したほうが絶対マシだろって思うのに、

「今、起こしに行くから!」

って、律儀に助けに来てくれる山田くん。
どんだけカッコイイんだよ。

「ねえ、この子男前過ぎない!?」

思わず、隣のまーくんにそう言ったら、なんだか真顔で見つめ返された。