一緒にゲームすることで、確かに距離は縮まった…と思う。
ゲーム画面の向こうでは、いつもよりずっと饒舌な山田くんが、きっと笑顔を見せているはず。
けれど、彼の部屋で実際に向かい合うと、やっぱり生真面目な顔の山田くんで、笑顔はなかった。
そりゃね、勉強してんだし、笑うような展開はそうそうないんだけどさ。
笑うと可愛いんだろうなーとか、見てみたいなとか、ちょっと思うじゃん。
そんなふうに考えながら、目の前のゆうくんの顔を見る。俺の視線に気がついたらしいゆうくんが、ニヤッとした。
「え、なに。そんなに見つめられると照れるってぇ。なになに?」
「ゆうくんはいいよなぁ」
「なんだよぉ、それ」
ゆうくんが肩を揺らして笑った。
これくらいカンタンに笑ってくれたらなー、なんて心の中でため息をひとつ。
気を引き締め直し、カバンからノートを出そうとしたら、キーホルダーが引っかかってガシャリとテーブルに転がり落ちた。
「あれ?それ今やってる映画のグッズ?」
ゆうくんに言われてハッとする。
この前まーくんと映画を観た時、すっごい面白かったから、お揃っちでキーホルダーを買ったんだった。
「もしかして、兄ちゃんと観に行った?」
ゆうくんの声のトーンが少し下がる。
なんか気まずい。
ゆうくんに誘われた時行かなかったもんな。
「…ずるい」
ええぇ、そんな…と言いかけたところで、ゆうくんに腕を掴まれた。
一瞬で視界がぐるりと回り、気がついたら俺は床に倒されていた。なに?なにが起こった?
「え…」
床に俺を押しつけ、見下ろしているゆうくんと目が合う。
「かずくんはさ、なんで兄ちゃんがいいの」
さっきより更に低い声でそう聞かれた。
え、これ、どういう状況?
理解が追いつかず、俺はポカンとゆうくんを見つめ返した。
「昔っから兄ちゃんにベッタリだったじゃん。兄ちゃんのどこがそんなにいいの」
どこが、って。
そんなの、ゆうくんだって知ってるでしょ。
それともお兄ちゃんを盗られた、とか思ってたのかな?