ゆうくんの家庭教師のため、まーくんの実家に週二回通ってるおかげで、食生活が充実してる。
おかずのお持たせまで準備してくれたりして、マジで親ってありがたいな。

時間に余裕ができて、まーくんがバイトでいない時に駅前に出かけてみた。
ギター屋さんを覗いたり、お世話になったマスターの喫茶店に顔を出したり。

そろそろ帰ろうかなと駅前の歩道橋に戻ってきたら、離れた所に見覚えのある金髪の頭を見つけた。

「山田くん?」

数人の男達に囲まれているように見える。
なんだか尖った格好の男達で、ちょっとコワイ。

山田くんは俺より背が低いから、男達の壁に見え隠れする。その後ろ姿の様子を確かめようと、俺は歩道橋の手すりに掴まり、伸び上がって眺めようとした。

「おい、何してる」
「わあ!」

突然肩を掴まれてびっくりした。
本郷の無表情な顔が目の前にあって、さらにびっくりする。今日も本屋のバイトだろうか。

「飛び降りるつもりか」
「そんなわけ…」
「おまえは、すぐアレコレ巻き込まれるからな。おかしな行動は慎め」

余計なお世話だよ!と口から出そうになったが、実際巻き込まれた所を助けてもらったのは事実なので、なんとか飲み込んだ。
でもさ、俺は女子高生とかじゃないんだからさ。

「そうだ、山田くんは…」

慌てて振り返ったけれど、もうあの金髪頭も強面の男達も見当たらない。
あれ?見間違いかな?

「なんだ、誰か知り合いでも居たのか?」
「うん、俺の家庭教師の生徒」

後ろ姿だったし、人違いかも。
そう思っていたら、ひょっこり歩道橋の上に山田くんの顔が現れた。
俺と目が合うと、真顔でペコリとおじぎしてきた。ホントに笑わないなぁ。
目線が隣の本郷にチラと向けられたから、もしかしたら本郷がコワイのかもしれない。コイツ目つき悪いし。

「大丈夫だった?」

絡まれてるように見えたと言うと、山田くんはきょとんとしてる。俺の勘違い?だったみたいで、本郷にあきれ顔でため息をつかれた。

「なんにしろ、あんまり奥の方までうろつくなよ。おまえたちみたいな子どもは危ない」

おいおいおい!ちょっと待て。
俺とおまえは同い年だっての!!
女子扱いどころか、子ども扱いってひどくない!?

ぷんすかする俺と、それを無視する本郷を残して、山田くんは静かに帰っていった。