「そろそろ帰るかな」

まーくんが立ち上がって俺に手を差し出す。
その手をとる前に、俺は思いきってゆうくんの家庭教師の件を正直に話した。
場所のせいかな、隠し事はよくない気がしたんだ。どうせすぐバレるだろうし。

「はあ?ゆうがそう言ったの?」

まーくんの眉が跳ね上がる。
その反応に俺は急いでまーくんの手を握って、その腕にぴたりと絡みついた。ほぼほぼ無意識の行動で、よく考えたらなぜそんな事をしたのか、自分でもよくわからない。
別になんにもやましい訳ないのに。

「ゆうくんも受験生になるしねっ」

口が勝手に言い訳がましい事を喋る。
まーくんは、「ふーん…」と言ったきり、しばらく黙って考え込んでいるようだった。
なんか、落ち着かないな。
なんでだろ。

だいたいさぁ、別に普通じゃない?
ゆうくんが自分の兄ちゃんの親友に家庭教師頼んだってさあ。親友ってか…なんなら恋人だけど。
あれ?これ、俺が女子だったらヤバい、のか?でも俺、女子じゃないし。…ええぇ??

モヤモヤ考えていると、

「まぁ、いいんじゃない?」

まーくんがそう言って歩き出す。
ちょっと意外な気がして、俺はワンテンポ遅れて歩き出した。

「…いいんだ」
「あいつも頑張らなきゃなんない時に、しっかりがんばってもらわないとね」
「うん。受験生だもんね」

なんでか、ホッとしてる俺。
なにを心配してたんだろう。まーくんが弟想いなのをよく知っているのに。

「でも、いい?勉強教えんのはリビングで!だかんなっ」
「へっ…?」
「母ちゃんに見張っててもらわないと」
「なんでだよ、ちゃんと教えるし!」
「そーゆー事じゃないのっ」
「なにそれぇ!もー!」
「はいはい」

年が明けても、相変わらずの俺たち。
雪のちらつく夜道を、ぐだぐだ言いながら二人で帰る。手袋越しでも繋いでいる手は温かかった。

まーくんが俺の正面に回り込んで微笑んだ。

「今年もよろしくお願いします」

そして俺も、同じ言葉を返したのだった。
よい一年になりますように!








おしまい☆



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