夜の八時過ぎに家に迎えにきたまーくん。
初詣に行くだけなのに、なにやら大きめのかばんを肩から掛けている。
俺なんか手ぶらだよ?
たいがいのものは、上着のポケットでことが済むもん。なにが入ってんだよと思ってたら。
「そんなんじゃ風邪ひくって!」
かばんからは、出るわでるわ、毛糸の帽子にマフラー、手袋。それ全部着たら、俺はまるでクマのぬいぐるみみたいにモコモコになっちゃうよ。
「ちょ、さすがに多いってぇ」
「あ!頭、濡れてるじゃん!もー、外に出る時はしっかり乾かさないと!」
えぇー、お風呂上がりに拭いたのにぃ。
ドライヤー使うの、めんどくさいんだもん。
まーくんは「俺がいないとすぐこれだから…」と、ブツブツ言ってるけど、目が笑ってる。
おまえは俺のかーちゃんかよって、小さく小突いたら、毛糸の帽子越しに頭をポンポンされた。
「あ…」
「雪だ!」
冷えると思ったら、外灯の淡い光の中にチラチラと雪の粒が見えた。
俺たちはそろって空を見上げた。
吐く息が白い。
「うっわ〜!テンション上がるね!」
まーくんの声が弾んでる。
雪国の人には申し訳ないけど、やっぱりワクワクするよね。まだまだ子どもなのかな、俺たち。
ここら辺りはもう、それほど雪も積もらないとはいえ、ひと冬に一、二度ドカッと降る日がある。
小さかった二宮姉弟と相葉兄弟で雪だるまを作ったりしてたなぁ。大はしゃぎで庭中の雪をかき集めて、最後はびしょ濡れで手が痛くなってさ。
次の日、だんだん解けていく雪だるまを見て、毎年ゆうくんが泣いてたな…。
そんな事をふと思い出す。
そうだ、ゆうくんの家庭教師の件。どうしよう。
着ぶくれてモコモコのぬいぐるみ状態の俺は、まーくんの腕にしがみつきながら、その話をしたものか…迷った。