「俺、ゲームしてこよ!かずくんもする?」
おつかいから急いで帰ってきたまーくんをマル無視で、ゆうくんが俺に笑いかけてきた。
まーくんが「ゆう!おまえなあ!」とムッとしてる。
ゆうくんはワザと言ってるんだよね?
なんだろ、やっぱり反抗期ってやつなのかなぁ。
俺はまーくんをチラと窺ってから、
「今日はやめとく。また今度ね」
と、笑い返した。そしたらゆうくんはなぜか赤くなって口ごもってしまった。
えぇ、拗ねてる?でもしかたないじゃん。
俺、母さんに頼まれたってのを口実に、まーくんに会いに来たんだもん。ごめんね、ゆうくん。
そのまましばらく、まーくんと並んでコタツにあたりながら、二人でみかんを食べた。
あまりにいつもと変わらなくて、一瞬アパートの部屋にいるような気がする。
不思議だな。
さっきまで、高校卒業するまでの日常を思い返して、懐かしいとまで感じていたのに。
気がついたら夕方になっていた。
そうだ、家に帰らなきゃ。うちは夜ごはんでお蕎麦を食べるんだ。
そう思うのに、おしりに根っこが生えたらしく、俺はぐずぐずしていた。
「あとで迎えに行くから。ちゃんと用意しといてよ」
まーくんの黒目がちな瞳が優しい。
見透かされてるみたいで恥ずかしくなって、俺は立ち上がった。耳がきっと赤い。
「送ってく!」
…バカじゃないの、すぐそこだって。
そう言うつもりだったのに、すんなり口から言葉が出ない。きっとバカなのは俺のほうなんだ。
そしてホントに家まで送ってくれるのがこの男、相葉雅紀。
ホントそーゆーとこなんだっての!ズルいよなあ!
帰っていく後ろ姿に、早くも迎えに来てほしいと思う俺もバカなんだよな。