急な提案に、俺は反応できずポカンとゆうくんを見つめ返した。

「…あ、ゆうくんも来年受験生か」
「かずくんも兄ちゃんに教えてもらってたよね?」
「えっと…まぁ、そうだね」

正確には翔ちゃんが俺の家庭教師だったけどね。結局潤くんも一緒に習ってたし、いつだってまーくんもその場にいたし、似たようなもんだ。
高校の縦の繋がりで、お手頃価格で教えてもらえていた。それを知っているんだろう、「俺も格安でよろしく!」って頼まれる。
ゆうくんは別の高校だけど、幼なじみだしね。それは全然構わないんだよ、俺は。
ただ…。

「じゃあ、まーくんに聞いてみるね」

そう答えたら、ゆうくんの顔がにわかに曇る。まだあどけなさの残る眉間にシワが寄った。

「なんで兄ちゃんに聞くのさ。俺とかずくんの話でしょ?関係ないじゃん」
「そりゃそうなんだけどさ」
「なに?かずくんがOKでも、兄ちゃんの許可がいる訳?」
「や、あの」
「ええ!まさか、かずくんは兄ちゃんに監視とか束縛とかされてんの!?モラ…モラハラとか?」
「ちが、違うって、別にそんな…」

俺は慌てて否定した。勘違いされてはたまらない、まーくんはそんなんじゃないもん。ってか、ゆうくん、よくそんな言葉知ってたな。

「だよね!じゃあいいじゃん」

ゆうくんの圧が強い。
ただ実際、まーくんが俺の家庭教師先にぐちぐち言うのは本当で、こっそり潤くんに家庭教師先を探してもらってるのも事実。

…これは束縛とかじゃないよね?
まーくんは心配してくれているんだし。
そう、そうだよな?

「たっだいまあ!!」

玄関ドアが開く音がして、まーくんの声が響いた。早っ!!
ゆうくんは人差し指を口元にあてて、ニッと笑ってみせる。うわぁ、どうしよう。

俺が返事する前にリビングに駆け込んできたまーくんは、息を切らしうっすら汗までかいていた。