まーくん家のリビングに上がり込む。
おばちゃんが「久しぶりねえ!」と嬉しそうに、お菓子やらみかんやら振る舞ってくれた。
まーくんの弟、ゆうくんに会うのも久しぶりだ。

コタツに入って、ありがたくみかんを剥きむきしていると、隣にまーくんが潜り込んできてみかんに手を伸ばした。
そこをおばちゃんにどつかれる。

「ちょっと!おつかい頼んだでしょ!」
「えー?後で行くって」
「急いでるんだってば」

ごちゃごちゃ揉めた挙句、おばちゃんの勢いに負けたまーくんが渋々出かけて行った。
俺はにっこりコタツの中から手を振った。

一旦静かになったリビング。
コタツの向かい側に座ったゆうくんが、低い声で話しかけてきた。

「かずくんさぁ、兄ちゃんと一緒に住んでんだよね」

イキナリ核心を突かれてドキリとする。
ゆうくんにはずいぶん前に、まーくんとキスしてる所を見られているから。俺たちのこと、だいたいわかってるんだと思う。
でも、なんか気恥しいっていうか、ちょっとヒヤッとするんだよな。なんでかわかんないけど。

「…ん、まぁ、そんなとこ」
「楽しい?」
「楽しいよ」
「ふーん」

小さい頃は、すっごい俺に懐いていて、ホントの弟みたいだったのに、お年頃になってから少しとっつきにくくなったような気がする。

「気を遣わなくてラクだよ。ゆうくんもいつか、彼女と暮ら…」
「別れた」
「え…、そなの?」

うわ〜、なんか気まずい。
俺は黙ってみかんを口に突っ込んだ。
そういえば、ゆうくんがまーくんのアパートに遊びに来たことないなとふと思う。

「かずくんさあ」
「え、なに?」

少し身構える俺に、ゆうくんが言った。

「俺の家庭教師、やんない?」