そして迎えた大晦日。

今日は姉ちゃんもいるし、手伝いもほどほどでいいだろうと自分の部屋でスマホゲームをしていたら、母さんに呼ばれてしまった。

「これ、お願いね」

手作りのおせち料理のおすそ分けを、まーくん家に届けるよう頼まれる。そういえば毎年届けてたな。渡されたおせち料理をそんな想いで見つめていると、姉ちゃんにおでこをつつかれた。

「なにニヤついてんのよ」
「…ニヤついてねーし」

なんだよ、姉ちゃんのほうがニヤついてんじゃん。そう言い返したかったけど、俺とまーくんの事を知っている姉ちゃんには頭が上がらない。
あれこれ聞かれる前に、さっさとその場を逃げ出して、まーくん家に急いだ。

なんだか、高校生の頃みたい。

こうやってよくまーくん家に行ってたな。
お互いまるで自分の家のように行き来して、当たり前のように過ごしてた。
付き合いだしてからは、いつだってソワソワして、隠れてイチャイチャしたりして。

それはそれで、楽しかったな。
たまにはいいのかもしんない。

まーくん家の呼び鈴を押そうとしたそのタイミングで、玄関のドアが開いて驚く。

「かず!」
「う、わ。びっくりした」

まーくんが満面の笑みで迎えてくれた。
えぇ?今や俺の居場所すらお見通しになったの!?とビビったら、母さんが電話していたらしい。なぁんだ、驚くなあ、もう。

まーくんの笑顔に勝手に赤くなる俺の顔。
まーくんが俺の頭をわしゃわしゃした。

やっぱり…離れてるのはたまにでいいや。

なんて。内心ニヤついていたら、まーくんが顔を寄せて囁いた。

「昨日眠れた?俺、あの後自分でシちゃった!かずは?」

なんて!
もちろんその場で頭をひと叩きしておいたのは、言うまでもない。