そんなこんなで実家に帰ったのが30日。

帰ったとたん、案の定大掃除にかりだされ、窓拭きを頼まれた。
窓ってキレイにするの、大変じゃない?拭き跡残るとスッキリしないし。まぁ、俺は掃除キライじゃないからいいけどさ。
そして、母さんのおせち料理作りも手伝わされ、なかなかのハードワーク。
夜、自分の部屋でベッドに潜り込む頃には、すっかりくたびれていた。

久々の自分の部屋。
なんだか不思議な気分になる。
夏辺りからほとんど帰らなかったからか、自分の部屋なのに少しよそよそしい感じがしたりして。
それに、一人で寝るのも久しぶりだ。
隣にまーくんがいないなんて、こんなにスースーするものなのかとびっくりした。

なんとなく眠れなくて、ゴロゴロと寝返りを打つ。ゲームでもしようかな…。
スマホを手に取った瞬間、着信音が鳴って落としそうになる。
耳に当てると、まーくんの声。

「かず、もう寝た?」

寝てたらこんなすぐに電話に出れないっての。でも「寝てた」って答える。
まーくんは「ごめんごめん」と笑った。絶対寝てなかったってバレてるじゃん。

それからしばらく他愛のない話をした。
別に何か特別話すことがあるわけじゃない。ただ声を聞いていたいだけ。
…なんて、少女漫画みたいな自分にちょっと引く。ヤバくない?俺。

「うわ〜、かずの声聞いてるとシたくなっちゃうなあ!」

………少女漫画を破壊する展開キタ。
そんな気、してたけどね。

「バカじゃないの」
「えー?かずはなんないのお?」
「なるかよ」
「じゃあ、今日のぱんつの色でも聞こうかな。そしたらそんな気分になったりしない?」

なんなんだよ、それ。
男のぱんつの色なんかエロ要素ゼロだろ。
呆れてそう言ったら、

「派手だとコーフンするんだよね♡」

目の前にいたら、絶対まーくんの頭叩いてたな。
居なくてよかった。思わずニヤついちゃった俺の顔が真っ赤なのを見られずに済んだもん。

高校生の頃は、毎晩こんなアホな会話を電話でしてたなぁって、すでに懐かしく感じた。
こーゆーのも案外いいもんだね。

「じゃあ明日迎えに行くからね」
「うん。おやすみ」

なかなか言い出せなかった「おやすみ」をやっと口に出して、部屋は静かになった。
さっきまでのスースーはもう感じなかった。