これまでのお正月は、単身赴任が長かった父さんも必ず帰ってきて、家族で迎えていた。
料理が得意な母さんは、毎年キレイなおせち料理を作ってて、でも俺はそれがちょっと苦手で。お雑煮ばっか食べてた。
集まった従姉妹たちと遊んだり、おじいちゃんおばあちゃんからお年玉貰ったり。
ずっとそんなお正月。
だから、やっぱり帰るんだろうなと思う。
クリスマスなんかはさ、もうだいぶ前から家族でって感じじゃ無くなってた。姉ちゃんも彼氏だか友達だかとイブを過ごすようになったし、俺も今年は帰んなかったし。
だってまーくんの誕生日だもん。二人でイチャイチャしたいじゃん。そのための同居と言っても過言ではないくらい。ま、少し…いや、だいぶヤり過ぎちゃったけど。
「うーん、帰るんじゃない?」
なんて、曖昧な返事をしておいた。
その後はみんなでできるゲームをしたりして、パーティは盛り上がり、興奮した俺はイタズラ心が沸き起こり、翔ちゃんのワインをこっそり盗み飲みした。
うぅわ!口の中がかカッと熱くなるう!
いい匂いだけど甘いわけじゃないんだ。
「いーけないんだ、そんな事して」
秒でまーくんに見つかる。
人差し指でしぃーってしてみせても、「未成年はダメなんだよ?」とニヤニヤしてる。
そして俺の手から取り上げたワインを、まーくんがさも美味しそうに飲んでみせる。
「……ずるい」
「俺はついこの間ハタチになったからねっ」
ちぇっ。
拗ねる俺をテーブル下に連れ込んで、まーくんは素早く口移しでワインを少し飲ませてくれた。
びっくりしたけど、さっきと違って少しだけ甘く感じたりして。なんか、ふわふわしちゃうな…。
「こらこら。こんなところで何してるのかな、君たちは」
「痛っ!」
翔ちゃんの声に驚いたまーくんが、頭をテーブルにぶつけて大きな音をたて、俺は我に返った。
そそそーだよ!なにチューしてんだよ!
全く油断も隙もない。
俺の顔が赤いのも、心拍数上がってんのも、恥ずかしさのせいであって、お酒のせいじゃないもんね。まーくんのせいだから!