俺の煮え切らない返事にまーくんがどんな反応をするか、俺は内心身構える。
バレバレな態度しといてなんだよって、思われても仕方ない。自分でも時々、自分がイヤになるよ、めんどくさい奴だなって。

黙って下を向いていると、まーくんが動いた。

「………!」

ハッとした時には、まーくんにがっつり抱きしめられていた。

「大丈夫だよ、かず」

優しい声。温かい腕。届く鼓動。
俺は胸が熱くなって小さくしゃくり上げた。
よくよく考えたら、何が大丈夫なんだか全然わからないんだけどさ。
でも俺は少し安心できたんだ。

克実ちゃんの部屋にあった本に、俺の写真が挟んであった事をまーくんに話した。
まーくんの顔がみるみる赤くなる。

「どういう事か、聞いてくる!」

そう言って立ち上がろうとするから、俺は慌てて腕にしがみついた。さすがせっかちだ。

「待って、待ってよ」
「なんでだよ、気になるだろ」
「そうなんだけど…」

知るのが怖い。
また前の時みたいに、まーくんが傷ついたりするかもしれない。
俺を襲った変態オッサンにキレてぶっ倒そうとした俺を止めてくれたまーくん。そのせいで怪我をさせてしまった。もうあんな思いはしたくない。

あんな写真、見なきゃよかった。
なんにも知らないでいれば、今頃夕ごはん食べて、二人でゲームでもしてただろうに。
そんな弱気な俺の肩をまーくんが掴んだ。

「何言ってんの!知らないほうが怖いに決まってんだろ!」

俺はまーくんに手を握られて、また克実ちゃん家の前に舞い戻ったのだった。