ちょっと小話笑
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浴室に響く鼻歌。
俺に全身トリミングされて、ご機嫌なわんこ。
放っておくとボディーソープで頭から洗っちゃったりするから目が離せない。
髪の毛を何度も染めた時はホント気を遣ったよ。マジメにトリートメントとかしたのは最初だけで、すぐに忘れてしまうからさ。
俺が仕事に追われてなきゃ、もう少し荒れずに済んだかもとか…妙な罪悪感。
ほんと、自分のことに興味ないから困る。
ほかほかのご機嫌わんこをバスタオルでくるんで、そのままベッドに運ぶ。
お酒が入ってるわんこは素直でちょっと大胆。俺の腕に甘えてふんふん頬ずりしてきたりして、めっちゃ可愛い。
「よーしよしよし」
手のひらで頭を大きく撫で、鼻先を髪の毛に突っ込んでくしゃくしゃにすると。
「もー、犬じゃないんだからぁ」
「はいはい」
「もー!聞いてるぅ?」
舌足らずな文句も、全身撫で回して可愛がると艶やかな声に変わる。その瞬間が好きだ。
俺は気分が最高に盛り上がって、うつ伏せわんこの腰を持ち上げた。
あぁ、いい眺めだ…と思ったとたん、
「ヤダってば!」
急にくる反抗期。
俺は内心のオロオロを不器用に隠しながら、「ヤダ?何が?なんで?」と慌てる。
いかんいかん、余裕を持て、俺。
「だからっ、俺、犬じゃないってば!このカッコ、ヤなの!」
「うしろからすんの、イヤなんだ?」
そう聞くとわんこは真っ赤になった。
「わんこ扱いなんて酷くない!?俺、撮影現場じゃめちゃくちゃお姫様扱いなんだよ?」
そして、いかに共演の桐谷健太くんが優しくて、頼もしくて、どんだけ大事にしてくれるかを滔々と語り出す。
なんだよ、ちょっと焼けるなあ!
俺はお姫様抱っこに切り替えて、そのうるさい口を塞いでしまう。
おとなしくなった唇に、濡れた唇をくっつけるようにして俺は囁いた。
「かずは俺の大事なお姫様でしょ?」
わんこはふくれっ面で目を潤ませる。
「もう幾つも靴をプレゼントしたでしょ」
「……くつ?」
そうだよ。
あれはガラスの靴なんだよ、シンデレラの。
片方じゃなくて両方だけど。
二人を繋ぐ運命の靴。
「…ピッタリじゃなかったじゃん」
「またそんな事言って。1cm足りないってんだろ?そんな訳ないのにさあ、なんであんな事言うかなあ?」
俺がちゃんとしたサイズを知らないはずがない。全部知ってるって。
ホントはわかってるよ。
恥ずかしかったんだよね?
靴の意味を知っているからね。
「オソロの革靴は間違いなくピッタリだっただろ?喜んでくれたでしょ」
「そりゃ嬉しかったもん。でも…なんかバレそうな気がするじゃん…」
ゴニョゴニョ言うわんこをしっかり抱きしめる。
もちろん、ホントにわんこだと思ってるわけじゃないよ。
顔がまんま柴わんこなのと、なんだかんだ従順なとこがそっくりだからさ。そう呼んでるだけ(心の中で)だよ。
かずはくっつきたがり。
いつでもぴとっどこかくっつけてる。
だからこんな時も胸と胸を合わせる方が好きなんだよな。安心するのかな?
後ろからのほうが、腰はラクそうだけどね。ちょっと刺激的で、惹かれるけどね。
「わかったよ、じゃあ…」
俺は可愛いかずをそのまま押し倒した。