「おまえ達、まるで女子会だな」
二人があんまりキャッキャ楽しそうだったから、博士は嫌味を込めて「ゆき」に言った。
もっとも、女子会なるものがどんな物なのかよくわからなかったが。
「わたしもニノさまも女子ではありません。むしろニノさまはマサキさまに突っ込みたいと言って…」
「ゆき!!」
みなまで言うな。
博士が血相を変えて手を突きだし、「ゆき」を制する。知りたくない情報という物もある。
「ゆき」はおとなしく口をつぐんで、小首をかしげた。まるでにのそっくりだ。
本郷博士は自分の胸をさすり、なんとか冷静になろうと努めた。
「ゆき」に、にのの脳の監視に戻らせ、深く椅子に身を預ける。相変わらず貧乏ゆすりが止まらない。「ゆき」はペコリとお辞儀してモニターから消えた。
なんという事だ。
にのに影響を受け過ぎじゃないか。
「白雪」を元同僚の智に預け、にのに似せようと仕向けたのは自分だ。「白雪」に、にのの脳を移植するつもりだったから、似ているほうが都合がいい。みんなも受け入れやすいだろう。
そう思ってのことだ。
にのの仲間の潤という男が、「白雪」ににのの人格を学習させたらしいが、それにしてもやり過ぎじゃないか?同期するにもほどがある。
本当にあいつの仲間はろくな奴がいない。
唯一マトモなのはあの医者…翔だったか、あいつだけじゃないか?三浦医師も信頼していたし。
博士は深いため息をつく。
残っていたお茶を一口飲み、それが冷めていることに肩を落とした。
「和菓子には熱い茶が合うんだ…」
ぽつりと独りごちたら、まるで聞こえていたかのようなタイミングで、にのがお茶のおかわりを持って部屋に入ってきた。
可愛い笑顔でにのが問う。
「はかせ!お茶のおかわりはいかがですかぁ〜?」
気が利くのは間違いない。