時間ぴったりにやって来た本郷博士は、相変わらずの仏頂面だったが、雅紀の餃子を一口食べると、キラリとその三白眼を光らせた。
それからは、ひたすら餃子を食べている。
「おいおい、ちっとは他のも食べろや!」
智がサラダやスープを目の前に押しやることで、博士は初めて気がついた様子だ。
「全部うめぇんだからな!」と、智は自分が作ったような顔で鼻の穴をふくらませた。そして潤は「酢胡椒でも食べてみて!」と笑顔をむける。
そんな和やかな食卓を、翔は満足そうに見やった。
ゲストルームでずっとうなだれていた雅紀。
それがまたこうやって、あいつが作った料理をみんなでわいわい食べられるようになったんだ。
感慨にふける翔の横を、にのが空いたお皿を手に通り過ぎる。キッチンでは雅紀が忙しく餃子を焼いていた。コンロの火の熱で汗だくだ。
「にのも焼かない?」
「俺、握るのが好きなの。焼くのキョーミないんだよねー」
「なんだよ、それ」
アンドロイドのゆきはあんなに焼いてくれたんだけどな…と、雅紀は苦笑して、焼けた餃子をお皿に移した。
と、急に口の中に餃子が突っ込まれる。
「あひぃ!」
にのの仕業だ。身体がアンドロイドだから彼は火傷しないのだ。
あんまり熱くて雅紀は涙目になったけれど、やっぱり焼きたては美味い。
はふはふしている雅紀に、にのが冷たいお茶を差し出した。
「まーくん、焼いてばっかであんま食べてないでしょ」
「じゃあ焼いてくれる?」
「えー、どーしよっかなあー」
なんだかんだ言いつつも、結局やってくれる可愛い恋人。何時だって優しいにの。
早くも家に帰って独り占めしたい衝動に駆られてしまう。
「……なんか、変なこと考えてない?」
図星を刺され、キッチンから追い出された。
でもこれも、たくさん食べてこいという合図なのだ。雅紀は素直に夕食を取りに行った。
大賑わいの食卓。
いつもの日常。
ライバル視している本郷博士でさえ、その風景に馴染んでいた。
雅紀に気がついた博士が、じいっと見てくる。
思いのほか刺さる視線にいつもなら睨み返すところだが、今日は微笑み返してやった。
すると博士が目を逸らしたから、心の中で小さくガッツポーズする。
「よっしゃ!食べるぞお!」
雅紀は大きな音を立てて手を合わせた。
この平和な日常に感謝。
明日も、明後日も、そのまた次の日も続きますように。
そう強く願う雅紀の声が食卓に響いた。
「いただきます!」
おしまい
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!!
ちょっと「おまけ」を書くかもです
……ブラペの最終回に放心してるんで
書けるかなぁ。。。(⸝⸝o̴̶̷᷄ ·̭ o̴̶̷̥᷅⸝⸝)
後書きだけになったらごめんなさいです