そして、迎えた夜。

にのの「そんな訳ないじゃん」という言葉は、めでたく?証明された。

なぜなら、雅紀が意を決してコトに挑んでみたものの、にのは終始きょとんとするばかりだったからだ。
もちろん「感じる」能力がないのはわかっていたが、もし経験があればそれなりの…例えば頬を染めるとか、耳が赤くなるなどの反応がありそうなものなのに、

「ここに入れんのね?」
「うわぁ、そんなの入るかなあ?」

まるで実験でもしてるような色気のないことばかり口にする有様だ。
しまいには「俺がいれるほうだったのにい!」などと悔しそうにぶーたれた。この様子だと、前に工房でそういう機能をつけてもらうかと言ったのは、男性機能をつける気満々だった事がうかがえる。(実際には男性機能はボディを総とっかえしなければ得られないらしい)


一方、雅紀はというと。
汗をかきかき、なんとかにのをなだめつつ、がんばってにのの体内に潜り込むところまで行きついた。もう必死である。

「……う、く、くぅ」

予想をはるかに超えて、気持ちいい。
あまりの気持ちよさに全身の血がたぎるようだ。やはり、裏用のを組み込んだせいだろうか。

にのへの想いに気がついてから、ずっと押し殺してきた感情。だからといって想像しなかったわけじゃない。
夢の中で、頭の中で、何度にのを抱いたことだろう。
けれどそれはあくまでも想像だけでしかない。本当はにのがその時どんな顔をするのか、雅紀にはわからないままだ。
それが今、生身の身体ではないとはいえ、にのとひとつになれたのである。
雅紀は感極まって泣きそうになった。

しかし。
しかしである。
にのはその時、さっきまでの元気はなく、困っているような顔をしていた。さすがにこの密着した体勢に、耳こそ赤くしてはいたが、どちらかと言えば、泣く前の子どもみたいな表情なのだった。

ダメだ!
気持ちいいのは俺だけじゃん!

ただでさえ息が荒いのに、さらに呼吸困難になりそうなくらい猛烈に焦った。

これじゃあダメなんだ。
こんなの俺は望んでない!

焦りから急速に身体の芯が凍えそうになったその時、にのが心配そうに身じろいだ。

「まーくん…気持ちい?」

甘い声と鮮やかな茶色の瞳に絡めとられる。
身じろいだほんの少しの動きで、あっという間に身体の奥が燃え上がる。一体中はどういう構造になってるのか、それともこれが普通なのだろうか。裏用だからってヤバいのじゃないよな?と思いつつ、なんとかこらえる。

「…う、ん」

申し訳ないと思いながらも嘘はつけなかった。
するとにのが、まるで花が咲くような笑顔を見せて、雅紀の首に抱きついてきた。
白かった頬が赤く染まり、赤い花のようだ。

「よかったあっ…!」

もう雅紀は自分を止められなかった。
にのの白い身体を抱きしめて想いのたけをぶつけてしまった。もう無我夢中だった。

興奮の階段を駆け上がり、ついに震える雅紀を抱きしめていたにのが、ほぼ同時に声を漏らした。

「…あ…っ」

その声に雅紀はにのの顔を見た。