「…ゆき、ちゃん?」
「本当にそんな性的な機能をニノさまにつけるおつもりですか」
まっすぐな瞳で真正面から問われると、雅紀はなんだかモゾモゾしてしまう。見た目がにのなので、にのに言われているような錯覚を起こしそうだ。
「えっと、ゆきちゃん的にはダメな感じ?前に工房でつけてもらえばって言ってなかったっけ」
「あれはニノさまの言葉です。あの時わたしの中に入ってらしたので」
「あ、そうなんだ、にのが…」
じゃあ、キスしてきたのはにのだったんだ。
そう気がついて、雅紀の胸は苦しくなった。
お互い想いあってたのに。もっと早くその気持ちを伝えていれば…。
「ダメではありませんけど。わたしは意味はないと思います」
「意味ないかな?なんで?」
アンドロイドは目線を下げ、説明しだした。
自分たちアンドロイドは、触覚や温度感覚はあるが性的に気持ちいいと感じるようにできていない。
確かにそういう用途のために作られたアンドロイドもいる。裏社会ではかなりえげつない行為をさせられている仲間もいるらしい。
「しかし、所詮真似ごとです」
「真似ごと…」
「わたし達は人の言うところの『感じる』能力はありません。作られたプログラムに従って動いているに過ぎない。『感じて』いるわけでも『喜んで』いる訳でもないのです」
でも…と雅紀は思う。
この前にのとイチャイチャした時、確かににのは「気持ちいい」と言ったのだ。
「身体に受け入れる場所を作っても、この間ニノさまが手でした事を体内でするだけのことです。たいして変わらないと思います。なんなら、口でも同じかと」
あまりに平然と話すので、うっかり流しそうになったが、なかなかどうしてものスゴい内容に度肝を抜かれる。
しかもにのとの行為を知られているので、雅紀の顔は完熟トマトくらい赤くなった。
しかし負けてはいられない。
にのとのラブラブな日々がかかっているのだ。
恥ずかしいのは俺だけなのだろうと、がんばって食い下がってみた。
「この前の時、にのは『気持ちいい』って言ってたんだよ。ほんとにぽーっとしてたし」
アンドロイドはこくりと頷く。
「それは、ニノさまもよく知っている感覚だったからでしょう。マサキさまと共鳴して、脳内で記憶が蘇ったのだと思います」
「じゃあ、新しく機能をつけても『気持ちよく』なれるんじゃない?」
「え?ニノさまは体内での経験があるのですか?」
……え。
…えええ!?
雅紀はその場で石のように固まった。
しかし心は大波に飲まれそうな小舟のよう。
「いいいや、まさか、そんなこと」
「あるのなら、もしかしたら気持ち…」
「いや!ないよ!ない…と思うっ」
そうだよな!?