にのがお休みの日に、雅紀と二人で連れ立って工房を訪れた。
気恥しくて、まだ新しい機能については話せてなかったから、智から簡単に説明されたにのはきょとんとしていた。そして、
「え。俺、男の身体になれんの?」
と、茶色の瞳をキラキラさせた。
「んーと…それはちょっとムズいなぁ」
「えー、ダメなの?ついてないとなんかお股がすーすーするんだよね」
「そ、そっか」
智は鼻の頭を掻きつつ、にのの身体に受け入れられる機能をつけてみようと考えている事を伝えてみる。
「なんで俺が受け入れる前提なのお!?」
至極もっともな不満でご機嫌ななめになった。挙句「こんな事なら、無くなる前にまーくんを襲っておけばよかったあ!!」と言って、雅紀をビビらせた。
智が「まぁまぁ」となだめにかかる。
「せっかく自由になったんだ、雅紀とイチャイチャしたいだろ?」
「…うんっ、イチャイチャしたい」
「俺もそんな二人でいて欲しいんだよ」
智の目が優しい。大きな手で、にのの頭をくしゃっと撫でた。にのは耳を赤くして雅紀を見る。
「まーくんもそう…思ってる?」
「思ってるよ、めちゃくちゃ思ってる!」
「…俺が機械だから…そうでもないのかなって、ちょっと思ってた」
俯き、小さな声でそんな事を言うにの。
あぁ、なんでそんな事を考えるんだろう?
毎日、どんだけ逸る気持ちを抑えてると思ってんの。自分ばっかり暴走すまいと必死なんだけど?
「まーくんも喜んでくれるなら、俺やってみるよ、リーダー、よろしくね」
「おう!そんでいつか金貯めて男の身体に変えて雅紀を襲ってやれ」
「うん!」
そんな二人の会話に(おいおい)…と苦笑いも、雅紀はにのの決断に胸を熱くなった。
こうして新しい機能を追加することに決まった。そのためのお休みを博士に調整してもらわねばならないため、詳しい打ち合わせはまた後日となった。
帰り道、雅紀の腕にぶら下がるように手を繋いだにのは、ずっと耳が赤くて可愛いかった。
その夜。
少し興奮していたにのがようやく寝たのを確かめて、雅紀はソファに座り、残っていたビールを喉に流し込んだ。
目が冴える。
俺も少し興奮してんだな。
そうだ、充電コード繋いどかなきゃ…。
雅紀がにのに覆い被さるようにして、充電コードを腰の辺りに差し込んだ時。
にのがパチリと目を開けた。
「マサキさま」
久しぶりに「ゆき」が現れた。