その後。
にのは本郷博士の所で秘書兼情報屋の仕事をし、雅紀はまたみんなの食事を用意する料理人に戻ることになった。
あれ以来、アンドロイドの「ゆき」には会ってない。ひょっとして博士の前では「ゆき」なのではないかと、雅紀は少々疑っていたのだが、そうではないようだ。
にのは自分の情報網を駆使して、博士の仕事を手伝っていると話しているし、「ゆき」の存在にも気がついていないように見えた。
あれは夢だったのかな…。
そんな気さえしてくる。
だからまだ、翔たちにも言っていない。
もっともにのとのイチャイチャを「ゆき」に見られてなければ、話していたかもしれないが。
イチャイチャといえば、そっちの方も未だ進んでいない。なんならキス止まりのままである。
にのの脳への負担も気になるが、とにかく自分だけが気持ちいいというのがすごく嫌だ。
たとえにの本人が気持ちよかったと言ってくれても、ほぼ変化のない様子のにのに実感がわかず、雅紀はただただ申し訳ない気持ちになってしまうのだった。
だから、今日は工房の智の元へやって来た。
前に智が、「ラブラブな二人にはそーゆー機能が必要なんじゃないか」と言ってくれたが、その時は恥ずかしい気持ちの方が強くて素直になれなかった。
しかしもうそんな悠長な事も言っていられず、智に相談しに来たのだ。
「いろいろ調べてみたけどよ」
思いのほか智のテンションが低くて、雅紀はちょっと不安になる。
「え、むずかしいの?」
「いや、出来なくはないんだけどよ、なんてゆーか、ソレ専用のアンドロイドのようにはいかないってゆーか」
そう言って眉を下げる智に、雅紀はなんだかくすぐったい気持ちになった。
ありがとう、リーダー。
いいんだ。そんなスゴい機能じゃなくて。
やっと恋人同士になれて、その気分を少し味わいたいだけなんだ。
「そっか。そうだな、いつか大金貯めてスゴいボディ買ってもいいしな!」
なんてその気になってる智と、雅紀は笑いあった。とりあえず今つけられる機能で試してみようと、智は奥にいる潤を呼んだ。
そんな機能つけて、本郷博士にバレたら怒られるかな?