恥ずかしさに打ちのめされていた雅紀が、ようやく顔を上げた時、まだアンドロイドは雅紀を見つめていた。雅紀はボリボリ頭を掻きむしって恨めしげにぶうたれた。
「なんでそんなに堅苦しくなっちゃったの?前はもっと親しげだったのにさぁ…」
最初にキスしてきたのだってそっちだし。
可愛い物言い、甘えたな仕草、全部気に入ってたのに。めちゃくちゃドキドキしたんだからな。
心の中でさらにぶうたれる。その声が聞こえたみたいにアンドロイドがため息をついた。
「それはニノさまに寄せたからです。マサキさまが元気になるように」
「それは、ありがたかったよ、けどさ、そこまで変えなくても」
アンドロイドはふと視線を逸らした。
「ニノさまがお帰りになったじゃないですか。この世にニノさまは一人でいいんです。もうわたしが寄せる必要はありませんから」
その言葉に雅紀はハッとした。
アンドロイドの表情も声音も特に変化なかったのに、なぜか胸をつかれたのだった。
アンドロイドは再び雅紀を見て、
「これからはわたしのことは『ゆき』とお呼びください。まぁ、それほど表に出てこないと思いますが」
そう言うアンドロイドは、やはり変化はなかった。思い過ごしだったのだろうか。
そんな事を気にしているうちに、アンドロイドは充電コードを自分に差し込み、再び横たわった。
「ねえ…」
もう返事はなかった。
目を閉じたアンドロイドは、にのに戻っているという事だろうか。
口元が小さくむにむに動いた。夢を見ているみたいだ。
「…まーくん…」
呼ばれて顔を覗き込んだが、やはり眠っているようだ。可愛い寝言に、雅紀の顔が熱くなる。
雅紀はにのの頭をそっと撫で、また腕の中にしっかり抱えて目を閉じた。