ごしごしごし。

約束通り、雅紀の背中をにのが洗ってくれる。
最初に下心を否定した手前、湧き上がるソワソワする気持ちを押さえ込まざるを得ず、雅紀はこっそり歯を食いしばっていた。

「まーくんの背中、広くて大好き!」

にのが泡だらけになるのも構わず抱きついてきた。前のような柔らかさはないけれど、張りのある固めのスライムのようなボディを背中に感じて、雅紀は思わず変な声が漏れてしまった。

「………くぅーっ」
「どした?」
「…目に泡が…」

もちろん嘘である。
腹の底の溶岩だまりがフツフツしそうで、雅紀はわざと乱暴に目をこすってみせた。

「ダメだよ、擦っちゃ。シャワーで流す?」

返事をする前に、もうにのが雅紀の膝の間に滑り込んできた。ピッタリ身体をくっつけて、下から顔を見上げてくる。
目が合い、雅紀の心臓が跳ね上がった…。

「うわあああ!!」
「………あ」

にのが言葉をつぐ前に、雅紀は速攻湯船に飛び込んだ。盛大にお湯がはね散らかし、それを浴びたにのはきょとんとしている。しかし、その耳は赤くなっている。

ヤバいヤバいヤバい…!
「あ」って言ったよな、見た?見られた?

そこまでの変化ではなかったとは思うのだが、とにもが恥ずかしくて顔を上げられない。
しん、と浴室が静まり返った。


「俺さ、今でもおしっこしたいような気がする時、あるんだよね」

にのがポツリと言った。

「おかしいよね、もうついてないし、必要もないのにさ…」

雅紀はハッと顔を上げてにのを見た。
にのは少し困った顔で小さく笑ってみせ、「もー!おふろ泡だらけじゃん!」と文句を垂れた。

「にのっ」

雅紀は湯船越しににのを引き寄せ、抱きしめずにはいられなかった。