アンドロイドなのにそんな事があるのだろうか。

「耳。赤いんだけど」
「あっ!これは今日設定されました。手を握られたりした時、赤くなるほうがより『人』に近いからって、ジュンさまが言ってました」

そう聞いて、慌てて握っていたアンドロイドの手を離した。そんなつもりで手を握ったわけじゃないのに、下心アリと受け取られたみたいでバツが悪い。

なんでだよ。普通赤くなるのはほっぺただろ。耳が赤くなるのはにのの特徴だ。

翔に言われてなのか、潤が進んでやっているのかわからないが、そうやってどんどん本人に寄せてくるのを、どう受け止めればいいのか。うれしいのか切ないのか雅紀にはわからなくなる。
戸惑いを隠せない雅紀に、更にアンドロイドは思いがけない事を言った。

「まーくん、って呼んでもいいでしょうか」
「はあ!?」

びっくりした雅紀は動揺のあまり、まな板の上にあった包丁に手をぶつけて、勢い包丁はアンドロイドの足元に落下してしまう…!

「うわあっ!!」

雅紀の叫び声とカチンという金属音が同時だった。真っ青になった雅紀がアンドロイドの足元に跪く。裸足のアンドロイドの足先には傷ひとつなく、相変わらず真っ白でつるんとしていた。

「大丈夫ですよ。万が一刺さっても血は出ませんから。痛くもないですし」
「ごごごめん、ごめんね」
「手は大丈夫ですか?」

逆に心配されて、雅紀は詰まっていた息を吐き出し、ぺたんと床に尻を落とした。
自分より相手の心配をするなんて、そんな所までにのそっくりだ。
アンドロイドがしゃがんで雅紀の手を取り、ケガがないか確かめている間、ぼんやりその姿を眺めていた。

どうしてにのじゃないんだろう。
こんなに似てるのに。

「あの…やっぱりまーくんって呼んじゃダメですか?」

アンドロイドが上目遣いで雅紀を見た。

どうしてそんなにこだわるんだ。その顔で頼んでくるのは反則だろ。