退院の日は晴天で、ほぼ真夏の日差しに目を細めながら、なけなしのベランダに布団を干した。
今日からまた一緒に寝られる。
やっぱり一人で寝るのは寂しいし、落ち着かないんだよな。自分の部屋で一人で寝てた頃はなんとも思わなかったのに。
贅沢者になっちまったな〜と思う。
昨日なんか、妙に目が冴えてなかなか眠れなくて困った。入院してから毎日、一枚だけ洗濯しないでおいたまーくんのパーカーを布団に持ち込んで、抱っこして寝ていたんだけど、それに顔を押しつけてふんふんしても落ち着かない。
それどころか、なんだかお腹の底がムズムズして、余計に眠れなくなっちゃった。
もーー!まーくんのせいだってぇ。
まーくんの温かい大きな手を思い出して、コーフンした俺は、ひとりでシちゃった。
もーー、まーくんには絶対ナイショ。
あぁぁ、パーカー明日絶対洗わなきゃ。
なんてうだうだしてたら、いつの間にか寝ていて、もう少しで寝坊するところだった。
一限の講義があったので、大急ぎで洗濯してゴミも片付けた。朝ごはんはコンビニでおにぎりをひとつ買い、教室に着くまでにたいらげた。
ずっとそわそわしっぱなし。
元々空いている二限の間に病院へ向かった。
「かず!」
病院に着いた時には、もう退院手続きも済んでいたらしく、自動ドアから出てくるまーくんが手を振っていた。
「まーくん!」
うれしくて自然とその腕の中に飛び込んだ。
あぁ、まーくんの匂い。
全力でぎゅうっとされて、うっとりする。
「…はぁ…」
満足して目を開けると、まーくんの後ろにおばちゃんが立っていた。目が合って身体が硬直する。
「う、わぁ…」
ヘンな声が出ちゃった。
おばちゃんは「ほんと、あんた達仲良しねぇ」と、ニコニコ見てる。
あれ、どっかで見た光景だな。
まーくんは腕を緩めなかった。
もしかしたら、おばちゃんは俺たちの事知っているのかもしれない。
でも俺は、確かめるのがまだ怖くて、まーくんに聞けなかった。
久しぶりに二人で部屋に帰る。
でも俺は次の講義があるから、またすぐに出かけなきゃならない。このままサボっちゃおうかなと思っていると、顔に出ていたのか、
「ちゃんと出席しなよ」
と、釘を刺されてしまった。
ちぇーっ。いいじゃん、今日くらい。
拗ねて尖らせた唇にまーくんがキスをする。
「昨日の夜さ、かずとえっちなことしてる夢見ちゃって、眠れなくなったんだよね」
そんな爆弾発言、今する!?
ますます出かけたくなくなるところだけど、なんだか昨夜の俺のハシタナイ行いを見透かされてるようで、恥ずかしくなってしまった。
同じくらいの時間に、同じような事を考えてたってのは、うれしかったけどね!