退院の前日も、面会時間ギリギリまで居座り、顔馴染みになった看護師さんに、
「ほんとに妬けるくらい仲良しねぇ」
って笑顔で言われた。
超がつくイケメンのまーくんは、看護師さんの間でも人気だったみたいで。そりゃそうだよね、イケメンの神様にも愛されそうなまーくんだもん。正直、俺は内心落ち着かなかった。
別にまーくんを信用してないわけじゃない。でも弱った時に看護師さんに手厚くお世話されたら、ちょっと心が揺らぎそうじゃない?
「まーくん、モテモテじゃん」
「なになに、ヤキモチ?」
「違いますぅ」
そっぽを向いて口を尖らせるも、耳が赤くなるのを自覚してる。この癖、直んないかなぁ。ブツブツ言っていると、まーくんが俺の腕を取って引き寄せ、囁いた。
「実はさ、俺とかずの関係バレてるかも」
えぇ!嘘だろ、マジで?なんでバレた?
俺は耳だけじゃなく顔まで赤くなった。そんな俺に、まーくんがうひゃひゃと笑う。
「おま、おまえ、テキトーな事言うなよっ」
「いや、ホントにそんな気がするんだって」
「なんでだよ」
「なんか、応援してくれてる感じがする!」
「わけわかんないっての!」
なんてつつきあってたら、そこへ戻ってきたさっきの看護師さんに「あらぁ」ってニコニコされた。
……まーくんが言うこともあながち間違いじゃないのかも。固まる俺をよそに、まーくんは更に俺を引き寄せて同じようにニコニコ笑い返してた。もう俺も半ばヤケクソで、ニンマリ笑っておいた。
まぁね。すっかり元気でなによりだけどね。
すでにドレーンも点滴も外され、不自由でなくなったまーくん。食欲もだいぶ戻ったようで、顔色も悪くない。正直、今すぐにでも連れて帰りたいくらいだよ。
「明日迎えにくるね」
「母ちゃん来るし、大丈夫だよ」
わかってないなぁ。俺が来たいの!
ついに面会時間終了。俺はしぶしぶ病室をあとにする。明日も会えるし、一緒に帰れるってわかってるのに、なんで寂しいんだろう。
俺は無理やり頭を切り替える。
明日布団を干さなくちゃな。
俺はスマホを取り出し、天気を調べた。