すっ飛んでは行ったけど、機械を避けて反対側に座り込む。別にそこに丸椅子があったからじゃなくて。機械側に行くと、胸に開けられた穴が見えてしまうのではないかと怖かったから。
ほんと情けないな、俺は。
「まーくん…痛い?」
ベッドのはしっこに頭をコテンと乗せ、点滴してるせいで冷たい指先をそっと握る。
まーくんは怠そうながらも少し微笑んでくれた。
「まだ麻酔効いてるから、痛くないよ。ただなんか、胸に違和感があって気持ち悪い」
そりゃそうだよな。チューブ入ってんだもん。もっと早くわかっていたら、穴を開けなくて済んだのもしれないのに。そう思うとたまらなくなってしまって。
「なんで、なんで黙ってたんだよ。なんで言ってくれなかったのっ、こんなになる前にさあ!」
「かず」
「絶対無理してたんだろ、具合悪かったのに、なんで俺に言わないんだよっ」
「かず、ごめんね」
「まーくんのバカッ…」
違う。
バカなのは俺のほう。
ほんとは「ごめんね」って言いたいのに、なんでこんなことばかり言っちゃうのか、自分でもわからない。
「心配かけてごめんね」
まーくんが繋いでいた指をほどいて、そっと俺の頭をよしよししてくれた。
胸の奥から熱いナニカがせりあがってくる。
そのナニカで息をするのも苦しいくらい。
あぁ、もうずっとこんなふうにまーくんは苦しかったのか。
「なんでまーくんが謝ってんだよ、俺、謝んのは俺だろっ。なんにも気がつかないで、へらへら菅田と遊んでたなんて」
「かずは悪くないよ、自分の身体の面倒は自分でみるのが当たり前なん…」
「違うよ!まーくんはいつも頑張りすぎるんだよ、そんで頑張り過ぎって、まーくんバカだから気がつかないじゃん。だから俺が見てないとダメだったのに。これじゃあ一緒にいる意味ないじゃん!」
次から次に言葉が転がり出てきて、しまいには涙まで出てきてしゃくり上げる始末。もうぐちゃぐちゃ。
けれど、少しずつ胸の中の圧迫感が減っていく。まーくんの胸に溜まった空気もどんどん出ていってラクになればいいのに。
頭を撫でていたまーくんの手が、俺の首を引き寄せ、俺たちはキスをした。
「バカってなに、ひどくない?」
まーくんの目が優しく笑っていた。