自然気胸とは、肺に穴が開いて空気が漏れてしまう病気らしい。聞いてるだけで俺まで息苦しくなってくる。
なんでまーくんがそんな病気になったんだろう。バイトのし過ぎ?サッカー始めたから?だいたい、がんばりすぎなんだよ。
俺はぐるぐるする頭で、本郷に聞いた。
「どうして肺に穴が開くの?」
「原因はわかっていない。ただ、若くて背が高くて痩せ型の人がなりやすい。だからイケメン病と呼ばれている」
イケメン病……。
なるほど、まーくんにぴったりじゃん。
まーくんはめっちゃ優しいし、どんだけ徳を積んでるんだってくらいいい人だし、まさにイケメンそのものだもんな。
だからイケメンの神様に愛されちゃうのかな。だからって連れていかれたりしないよな?
まさか、そんな…まさかね。
突然頭の中にイメージが沸き起こる。
まるで空から降ってきたみたいに。
イケメンの神様がまーくんの手を取って何か囁き、どこかへ連れていこうとしている。
優しげなその神様は、まーくんの顔をしていた…。
ゾッとして我に返った。
なに考えてんだ、俺は!
どっと全身にイヤな汗が吹き出した。
その時、ポケットの中でスマホが鳴り出し、俺はマジで飛び上がった。慌てて取り出すと、菅田からの着信だ。怖い怖い、心臓が止まるかと思ったじゃん。
そうだ、夜中に流星群を見に行く約束をしていたんだった。それどころじゃなくて、すっかり忘れてた。
「す、菅田、ご、こめ」
声が上擦ってうまく話せなかった。
電話の向こうの菅田は、そんな俺の様子に気がつかないようで、
「星がキレイだよ〜」
と、明るい声で言った。
ナントカ流星群。流れ星。
俺はつっかえながら菅田に行けない事を伝えて謝ると、本郷を振り返った。
「屋上、行きたい!行ってもいい?」
本郷はうんざりした顔でため息をついた。