連絡を受けたまーくんのお母さんと、弟のゆうくんが駆けつけた。そして慌ただしく救急の診察室に入っていった。
俺は長椅子のところでスマホを握りしめたまま立ち尽くしていた。本郷はと言えば、黙って長椅子に腰を下ろし、俺を見ている様子。
「おい、座ったらどうだ」
「………え」
「おまえがそうやっていても、何も変わらん。だいいち身内しか関われないしな」
「救急車に乗ってきたの、俺なのに」
「他人なんだから仕方ない」
むむう。他人じゃないもん!
心の中ではぶーたれてはいたが、もちろん言い返せない。事実っちゃあ事実だ。でも言い方な!もうちょっとさあ、なんかあるだろ。
俺は黙って椅子に座り込んだ。
しばらく無言で本郷と並んでいた。
本郷はカバンから取り出した本を読んでいる。
ようやく診察室からゆうくんが出てきたので、俺は弾かれたように立ち上がった。
「ゆうくん、どう、どんな感じ?」
「自然気胸だろうって。兄ちゃん、ここのとこどんなだった?全然家に帰ってこないからさあ」
「ん、と」
どんなだった…って。
すごく忙しくて、すごく疲れてた、と思う。
朝、あんまり走らなくなってたし、夜も俺より先に寝ちゃう事も多かった。
食欲は、そういえば前ほどなかったかも。
「あれこれ、やりすぎじゃないの」とか、「風邪気味?」とか聞いても、いつだって、
「だいじょぶ、だいじょぶ!」
って言われて。それで…。
そこまで考えて俺は愕然とした。
なんもわかってなかった、俺。
きっと具合悪かったんだ、まーくん。
なんで気がつかなかったんだろう。
毎日一緒にいるのに。
えりかちゃんが盲腸になった時、えりかちゃんの身体の具合の変化に気がつかなかったって、自分を責めていたせいさんの姿が、目の前に浮かんだ。