その夜遅くに雨が降りだした。
窓をたたく雨粒の音を聞きながら、隣で寝息を立てているまーくんをそっとうかがう。朝まで雨が降ってるといいな。まーくんが走りに行かなくて済むから。

俺はといえば、イチャイチャの後なんだか眠れないでいた。別にコーフンしてとかじゃない。むしろほんとにイチャイチャだけで終わったし。
まーくんがかなりお疲れ様なのがわかってたから、俺が主導権を握ってやったゼ!
そんで早く寝かせてあげたかったんだ。

俺もそのまま眠るつもりだったんだけど、なんだかね、突然頭の中に言葉がメロディが次々湧いてきたんだ。雨音がそのまま音楽になっていくみたいな。不思議な感覚。
俺は暗い部屋の中、うっすら浮かび上がるまーくんの寝顔を見ながら、生まれてくる不完全な音を見失わないよう追い続けた。

それから、まーくんを起こさないように、そっと絡みつく腕をはずして、俺は布団から抜け出した。眠りが深いようで、まーくんはピクともしなかった。よかった。

パソコンを起動して、ヘッドホンをつける。いつもはネッ友とゲームするために使っているヘッドホンが役に立つなんてね。
俺は作曲アプリをダウンロードして、頭の中のメロディを形にしてみる事にした。
まーくんのお誕生日用に作った時は、マジでむちゃくちゃ時間がかかった。人生二度目の歌作りは、信じられないほどあっという間にできてしまった。こんなこと、あるんだ。
俺はゾクゾク興奮してしまって、朝になり、まーくんが起きたのにも気がつかなかった。
パソコンの画面の横にまーくんの顔がひょいと現れてびっくり。

「すっごい集中してるね。なになに?新しいゲーム?」
「あ、うん…まぁそんなもん?」

とっさにごまかす。
まだ完全じゃないんだもん。できあがるまでナイショにしておきたい。そんで、驚かせるんだ。

まーくんは、昨日飲んだ慣れないお酒のせいで頭が痛いと、また布団に転がった。

「だからぁ、お酒は20歳を過ぎてからって…」

ニヤニヤして言ったら、「こいつっ」と、手を掴まれて布団にひっぱり込まれた。
そのまましばらく、お互いの体温を感じながら、じっと抱き合った。
そんな静かな朝。