あれ以来、菅田からちょくちょくメールが来る。他愛のないつぶやきだったり、しょーもないダジャレの時はこっちもテキトーに返しておいた。
路上ライブのお誘いには、「行けたら行く」みたいな返事をする。で、ほんとに行くことも結構あった。偶然なのか、まーくんの帰りがで遅くなる日が多かったし、俺もバイト上がりの時間にちょうど良かったからってのもある。
俺は早速、実家からギターを持ち込んだ。それを見たまーくんが目を輝かせた。
「お!ギター!持ってきたんだ」
「へへっ。だって宝物だもん」
素直にそう言うと、まーくんにぎゅうぎゅう抱きしめられた。苦しい苦しいって。でも赤くなった顔を見られなくて済んだからよかったかも。
「なになに、菅田の影響?」
頭に乗せられたまーくんの顎から伝わる静かな低い声。べ、別になにもやましいことないのに、なんか焦る。もー!やっぱりあのチューのせいじゃん。菅田のバカ!
「んー…。歌ってるのを見ていいなとは思ったよ。てか、歌うっていうより、自分で作りたいって感じかなぁ」
まーくんのお誕生日に歌を作ってプレゼントした事を思い出したんだ。あれはすっごく楽しかった。披露するのは恥ずかしかったけどね。
まーくんに更にぎゅうぎゅうされて、
「俺のために作ってくれたこと、あったもんね!そだ、歌って、歌って!」
「えぇー、今?ヤダよ恥ずいもん」
「なんで。いいだろ!?」
あんまり「歌って」と言われるから、しかたなく俺はギターを抱えた。けど、歌ったのは即興「相葉雅紀の歌」!もちろんその場で思いついた、まーくんのアレコレを綴ったものだ。
きょとんとしたまーくんは、
「なんだよぉ、俺のことディスってない!?」
と、俺からギターを取り上げて、またぎゅうぎゅう責めにしてきた。ディスるなんて、そんな。俺的には愛しかないんですけど。
まぁ、口に出しては言わないよ。でもまーくんには伝わってるのか、目が笑ってる。
ぎゅうぎゅうがイチャイチャに変わっていく。
こんなふうに過ごせるなんて。
まーくんがアパートの部屋を借りてくれて、ほんとに感謝しかないよ。
ずっと一緒にいたいのに、帰らなきゃならない。その切なさ。次の日には会えるってわかっているのに感じるあの離れがたい気持ち。それも悪くはなかったけどね。
俺は思い切りまーくんに抱きついた。