菅田がお礼したいと言い張るので、ラーメン屋さんに行って奢ってもらってから帰った。
結局カフェ併設の本屋さんには寄らず、なんなら明日の朝ごはんを買うのも忘れてしまっていた。

「ま、いいや。ごはんを炊こう」

まーくんのお母さんが持ってきてくれたおかずがあるし。そう思って冷蔵庫の中のおかずを覗いていると、まーくんが帰ってきた。

「…あれ?かずも外で食べたの?」
「うん。偶然知り合いに会っちゃって」
「へ〜、誰?」
「…菅田」

一瞬言い淀んでしまった。アイツが変なことするからさあ、思い出しちゃったじゃん。
まーくんの眉がぴくりと反応してる。
俺は、アイツが路上ライブしていた事、相変わらずな調子で未だに片思いらしいことを早口で説明した。もちろんチューされたことは内緒だ。

「ふーーーーん」

まーくんはちょっと不機嫌そうな顔つきでどかりとラグに腰を下ろし、そのまま寝転がった。
俺はわんこのようにそのそばにぺたりとくっついて同じように寝転がる。まーくんの大きな手が俺の頭を撫でた。
唇が触れ合う。そうだよ、やっぱりチューはこうでなくちゃ。まーくんとするからいいんじゃん。と、アルコールの匂いがした。

「ん?お酒飲んでんの?」
「少しね」
「お酒は20歳を過ぎてから、じゃないの」

わざとクソ真面目な顔でそう言ってやる。
まーくんは苦笑いをして、

「20歳のヤツがいてさ、そいつのを間違えて飲んじゃって。責任取らされた」
「んはは」

慣れないお酒のせいなのか、まーくんはうとうとしだした。ここのところずっと忙しくて疲れが溜まってるんだろうなぁ。
眠りが深くなったのを確認して、今日は俺が布団を敷いてまーくんを寝かせることに。
いや、重いって!
よく寝てる俺のことを運べるなあ!
うんしょうんしょと頑張ってみても、ほとんど移動できない。最後は寝ぼけまなこのまーくんが半分くらい自分で布団に潜り込んでくれた。
珍しく汗だくになったので、俺はシャワーを浴びて、それからまーくんにくっついて寝た。
眠りに落ちる寸前、ふと思った。

自分の部屋に置いてあるギター。まーくんにもらった宝物。こっちに持ってこなくちゃな。