そのままグダグダ長居をしているうちに、えりかちゃんが帰ってくる時間になっていた。
ランドセルをカタカタ言わせてお店の入口から飛び込んできたえりかちゃん。もうすっかり元気そうだ。

「あ!かずなりだ」

相変わらずのナマイキな呼び捨ても、なんかニヤケちゃうな。
俺とまーくんが持ってきたプレゼントを手渡したら、「かわいい!!」と真っ白わんこに頬ずりして喜んでくれた。そして俺にぴったりくっついて、入院中の事や学校での話を機関銃のように話す。こういうおしゃべりなところ、ホント女の子だよなあと思う。

「えっ!かずなり、まさきと一緒のお家に住むの?なんで?」

大好物の卵サンドを齧っていたえりかちゃんが、びっくりまなこで俺とまーくんの顔を交互に眺めた。なんでって言われても…、なんと答えたらいいんだ。俺は勝手に耳が赤くなるのを感じた。

「一緒だと楽しいからねっ」

まーくんがにこにこ答えた。
そんなんで答えになるのかよ。

「ええー!いいなあ!」

………なるんだ。
えりかちゃんは「ずるいずるいー。わたしも一緒に遊びたい!」と足をパタパタさせた。
まーくんたら「遊びに来る?」とか言ってさ。なんなの、その軽いノリは。まだ俺自身が一緒に住めるかわかんないっての!

「わたし、お泊まりしたーい」

すっかりその気のえりかちゃんの言葉に、マスターが反応する。

「いや、さすがにそれは…」
「えー、なんで?」
「なんでって…」

まぁ、男子大学生二人の部屋に小学生の美少女って絵面はちょっとね。最愛の娘ならなおのこと。
言うても俺たちほどの安全牌はそう居ないと思うけどね。
なんて少しばかり自虐的思考に傾く俺。

「そうだ!」

突然せいさんが声をあげた。昔風な手のひらを拳でぽんと叩くアクション付きで。

「ズルズル居続け作戦はどう?」

ずるずる?

「「なにそれ?」」

俺とまーくんが同じ動き、同じ表情で、同じ事を言ったと、せいさんが吹き出した。