部屋はいわゆる1Kという広さらしい。
手前にキッチンがあり、奥の部屋とはガラス戸で仕切ることができる。
二つ並んだドアを開けると、トイレとお風呂。
「ユニットバスじゃないんだあ!」
学生向けで狭いってまーくんが言ってたから、てっきりあのホテルみたいにくっついているのかと思っていた。
「へえぇーー!」
俺はあちこち、開けられそうなところは全部開けて、その度になんやかや感想を口にする。言葉が滝のように溢れ出して止まらない。
まーくんは奥の部屋に座り込んで、そんな落ち着きのない俺を笑って見ていた。
ひと通り見終わると、まーくんが「おいで」と腕を広げて俺を呼んだ。
ホントはその胡座をかいた足の上に潜りこみたかったけど、照れくさくて横に座った。
まーくんは買ってきたペットボトルのお水を差し出して、
「気が済んた?」
と、目尻にくしゃっとシワを寄せる。
俺はえへへと笑ってお水を飲んだら、すっごい喉が渇いていたことに気がついてごくごく飲んじゃった。そっか、コロッケ食べたもんな。
一息ついたタイミングで頭をわしゃわしゃされた。ワンコかっての。
「あちこち調べるの、猫みたい」って、あれ?今日は猫扱いだった?
そう思うそばから、ほんとににゃんこみたいに抱き寄せられ、まーくんの胡座の上に収まる俺。
「まーくんのおばあちゃん、アパート持ってるなんてすごいね」
照れ隠しに話題を変えてみる。
そう、実はまーくんのおじいちゃん家はけっこうなお金持ちなんだ(たぶん)。
だってクルーザー?とか持ってるし、なんかいろいろ動物飼ってたりするし。俺は海もよく知らない動物も苦手だから見た事ないけどね。
「親からの貰い物らしいけどね。よくじーちゃんと喧嘩したらここに住んでやるって言ってた」
部屋は埋まってるのにさあって、まーくんが俺の首筋に顔を突っ込んでくぐもる声で笑った。
それからしばらく、言葉のない会話をした。
とりあえず部屋が二階でよかったと思う。
一階じゃあ、通行人にすら見られそうだもん。マジでカーテン買わないとな。
てかさ、まーくん…ちょっと控えようぜ!