一緒に暮らす。
朝起きて一緒にごはん食べて。
学校行って、バイトとか行って。
夜帰ってきて一緒にごはん食べて。
いや、買い物も一緒かな。
そんでお風呂入って。えっ、これも一緒?
そんで一緒に寝る……。寝る、のか?
うわわわわわっ!マジで!?
それが毎日って、スゴすぎない?
そんなことばっかり頭に湧いてきて、足元が益々ふわふわする。繋いだ手を引っぱられながら、まーくんの二歩くらい後をぼーっと歩いてた。
「ねぇ、聞いてるっ?」
「…え、なにが?」
まーくんは「もー!」と口を尖らせ、俺の顔をのぞき込む。なんか家電の事とか話してたらしい。ごめんって、なんかふわふわしてんのよ。
「とにかく一度部屋を見に行かないとね。いつ行く?いつがいい?」
「ちょ、ちょっと待って」
「来週のバイトの予定は…」
相変わらずのせっかち。
そういえば俺、まだ一緒に暮らすなんて返事してないんですけど!
にしても、こんな大事な事、俺たちだけで決めていいものなの?まーくんは親に言ったんだろうか。母さんはどんな顔するのかな…。
家に帰りついても、まーくんは俺の手を握ったまま離さなかった。
俺も黙ってまーくんにくっつく。
四月の夜風はまだ冷たかった。
まーくんの家はすぐそこ。明日もきっと会える。少なくともアパートを見に行く週末には間違いなく会えるはず。
なのに、「じゃね!」の一言が出てこない。
言いたくないんだ。
こういうのを「離れがたい」って言うのかな。
どれだけ一緒にいたら気が済むんだろう。
「……もうイヤじゃん、こーゆうの」
まーくんがポツリと言った。
このままどっちかの部屋に泊まっても、周りが気になって落ち着かないし。
そのスリルを味わうのもたまにはいいのかもしれないけど、いつもだとホントに疲れるもんな。
「切ないんだよ」
俺の手を握るまーくんの手に力がこもった。