ぐるるぅ〜〜〜。

またかずくんのおなかが鳴った。
えへへっと照れ笑いしたかずくんが、「早く食べに行こーよっ」と足をパタパタさせる。

俺はもらった大事なスニーカーを丁寧に箱に戻し、かずくんの手を引いて立ち上がった。かずくんは嬉しそうに俺の腕にぶら下がって、必殺上目遣いで囁いた。

「奢ってね」
「えぇ?今日はがんばった俺にご褒美なんじゃないの?」
「ご褒美、あげたじゃん」

そう言って少し尖る口。
わかってるよ、そんな顔すんなよ。
そんなふうに口を尖らせてると、チューしたくなるだろ。しちゃうぞ。
なんて。
そう思いながら、

「奢るよ、奢る!ありがとうねっ」

と、肩を軽くぶつけた。
なんだか心が久しぶりに軽い気がする。

「そうだよぉ、俺、振られちゃった可哀想な奴なんだからね。ハンバーガーにポテトもよろしく」

そうだった。
かずくんに彼女ができて俺はあんなにぐちゃぐちゃに悩んでいたのに、それももうずいぶん前のことのみたい。
かずくんが振られてホッとしてるなんて、俺はサイテーな奴かもしれないな。
けどさ。

「大人になったらさぁ、ホンモノのスニーカー買ったげるね!」

なんて、茶色の瞳をキラキラさせてるかずくんを見てると、落ち込んでるようには見えないんだよね。無理して笑ってる顔じゃない。俺にはわかるんだ。

「じゃあその時は、俺がお揃いの靴をかずくんに買うよ」

そう言ったら、最上級の笑顔を返してくれた。
今日は「『かずくん』じゃないでしょ」ってツッコまないんだね。くふふ。

「約束っ」

小さい頃みたいに小指を差し出してくるから、俺も迷わず指をからめた。

いつだってお互いの未来にお互いの姿がある。間違いなく。同じ道をふたりで歩いて行くんだ。
たとえ途中に横道や寄り道があったとしても。
その先でひとつに繋がっている。
その時に見上げる空もきっと青い。

俺はかずくんのおなかの虫を宥めるために、大きく一歩踏み出した。






おしまい(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎)ペコ