俺がかずくんの日焼けを心配するのをわかっているんだろう、「ちゃんと上着着て帽子かぶってたからすっごい暑かった」と言い訳してる。
「しかもさぁ、無農薬だから虫もけっこういて、マジキモかった」
そうだよ、虫も苦手なのに。
俺のためにそこまでしてくれたんだね。
さっきまで喉に詰まっていた塊とは違う、もっと柔らかくて熱いものが胸の奥から膨れあがってくる。その熱さが俺の顔を赤くした。
「そんで、一緒に野菜の世話しながら華ちゃんといっぱい話したんだ。華ちゃん、相葉くんのことめっちゃ褒めてたよ」
「ほめ、てた?」
「そっ!すごく真っすぐでがんばり屋さんで、一途なんだねって」
俺は黒木華のつぶらな瞳を思い浮かべた。
全部見透かされてたんだ。
「だから相葉くんが試合してるとこを見せたかったんだよね。だって一番がんばってて、一途な相葉くんを見られるじゃん」
「…う、ん」
「したら、そういう意味じゃないって言うの。そういう意味じゃなきゃ、どういう意味?」
どういう意味って…。
たぶんだけど、黒木華は俺の試合に興味なかったと思うよ。だってきっと、もう一途な俺を見て知っていたんだ。
正直自分が一途だとは思ってない。ただかずくんが好きなだけ。やっぱりバカなのかな、バスケバカならぬかずくんバカ。
黒木華はなんて答えたんだろう。
「聞いても答えてくんないの。自分で考えなさーい!だって。先生かってのっ」
ぶぅと口を尖らせてかずくんが文句を言った。
さっき思い浮かべた黒木華の瞳が三日月みたいに細められる。
俺が思ってる答えで合ってるんだよな?
背中を押してくれてるんだよね。
一番暑い昼下がり。
セミの鳴き声が雨のように降りそそぐ中、一瞬涼しい風が吹き抜けた。
つられて見上げた空が青かった。