大会が始まり、俺たちのチームは快進撃を続けていた。連日の試合にもかかわらず、みんなは疲れも感じさせることなく絶好調だ。

試合会場にかずくんの姿はない。
それは、俺が準決勝まで来ないでほしいと言ったからだ。早々に負けてしまうことがあったら(無いと思うけど)、そんな姿を見られたくなかった。
ふがいない理由は言わずに、ただ「準決勝まで行ったら見にきてよ!」と伝えたら、

「ふーん。わかった」

と、かずくんは特に不満な様子もなく、あっけなく了解してくれて拍子抜け。
それはそれでなんか、ちょっと寂しく感じてしまう俺は、自分でもめんどくさい奴だと自覚してる。
そのうえ更に、

「じゃあ、準決勝の時華ちゃんも誘おうかな」

とか言われて。いや、そこは頼んでないんだけどと凹んだりさ。
そして、本当に準決勝までかずくんは試合を見に来なかったんだ。内心、なんだかんだ言っていても来てくれるのではないかと期待しちゃってる俺も居て、やっぱりめんどくさいんだよ、俺は。
自分でもイヤになる。

だからしばらく会ってないんだ。
その間かずくんがどうしていたのかはわからない。
なぜなら頼りにしていた風間が、家族旅行でハワイに行ってしまったから!
肝心な時に居ないなんてさあ。ほんとにマジで頼むよ、風間ぽん。「お土産買ってくるからねえ〜」って、そうじゃないんだよ。

でも今日はついに準決勝だ。
かずくんが来てくれるはず。昨日の夜電話したら大喜びで、「がんばれえ!」って言ってくれたし、試合の開始時間も確認した。
俺はそわそわと試合会場である広い体育館を見渡した。でもかずくんの姿は見えない。
え、いない?
途端に不安になる。
まさか黒木華とデートに行っちゃった?

まさかそんな事と思いながらも、俺の気分は地の底まで落ち込んだ。