「あっちい!」
思いっきりシャワーの蛇口を捻ったら、思わず叫んでしまった。出しなはたいして熱くないはずなのに、皮膚が痛い。
見れば「イテテテテ」と風間も顔をしかめていた。
そこで初めて真っ赤になっている自分の腕に気がついた。そうか、日焼けてるんだ!
バスケ部は体育館での活動だし、炎天下と言えばプールの授業くらい。しかも今年は曇り空の日が多かったからあまり焼けてなかった。
今日一日、遊園地を歩き回ったことで焼けに焼けたのか。うおぉ、痛え。
俺はハッとしてカズくんを見た。
あんなまっちろ肌のかずくん。俺以上に真っ赤に腫れて大変なことになってるはず。
なんだけど……。
あれ?鼻歌歌ってる?
のんきにシャワーを浴びてるかずくん。
見れば赤くはなっているけど、そこそこ既に日焼けているのか、大したことはない模様。
制服がある中学生になってからは、登下校だけでもまぁまぁ焼けはするよな。でも思っていたよりずっと日焼けていることに内心驚いた。
………それだけ黒木華とデートしてるってこと?
自宅ゲーム部所属になってから、すっかりインドア派になってたのに。
それが『彼女』の威力?
「どしたの」
俺が出しっぱなしにしていたシャワーをかずくんが蛇口をキュッと捻って止めた。
それで俺は我に返った。
「なぁに見てんの。えっちぃ」
なんてこと言うんだよ!
そう言われて顔が爆裂紅潮した。
ちげぇし!
そりゃいつもはちょっとえっちな目で見ちゃってるけど。だって、ちくびとかすごいキレイな桃色だし、脇なんかまだまっちろすべすべだしさ、見ちゃうって。バレたら問答無用で頭叩かれるだろな。
だけど今のは違う。
むしろ凹んでんだよ。
そう思いつつも、この頃の俺のスケベ心を見抜かれたようでバツが悪かった。
「なななんだよっ!見てねぇし!」
「んっははっ」
かずくんが笑って、自分が使っていたシャワーをこっちに向けてきた。
「イテテテテ」
思わずそう言ったが、かけられたシャワーは、ずいぶんぬるめだった。
「立派に焼けたねぇ。冷やしたほうがいいよ」
と、かずくんは真面目な顔で「だから銭湯はやめとこうって言ったのに」とぶつぶつ文句を言った。
「かずくんは平気なの?」
「まぁ痛いけど、ガマンできるくらいかな」
「なんで?いつもは真っ赤に腫れるだろ」
かずくんはちょっと間を置いてから、
「俺も中二だし。いろいろ成長してんのよ」
なんてエラソーな口をきく。
よく言うよ、まだ脇もツルツルなのにさあ。
かずくんはそういった成長がゆっくりみたいではあるけど、それでも最近は目のやり場に困るようになってきた。
そろそろ銭湯も気をつけないと。
ヤバいおやじとかに見られてないか、チラリと周りに目を配る。
「いろいろってなに。どこら辺が?」
「ははっひどぉい。いろいろはいろいろっ」
そう言うと、かずくんはさっさとお湯に浸かりに行ってしまった。くそぅ、熱くて入れねぇ。
水風呂にでも入るか。