ええ?
去年のバレンタインの話?
あぁ、かずくんとポッキーゲームした事ね。
そうなんだよ、かずくんがポッキー買ってきてさぁ、「ゲームしよっ」って誘ってきたんだ。
違うちがう、俺が仕掛けたわけじゃないって。
かずくん的には『どこまで顔を近づかられるか』というゲームだったらしくて、ほんとイタズラ小僧だよね。いや、小悪魔かな?
だってさあ、ドキドキするじゃん。
俺からすると顔がくっついたって全然平気なわけで、むしろチューしたいくらいなんだから。
どさくさに紛れてチューしてしまおうかとか、下心がうずうずするだろ。
ただ、かずくんが面白がってるだけってのがセツナイよな……。
ポッキーの端っこを咥える。
かずくんの茶色い瞳が間近にある。
こんなに近くていいのか。俺の暴れまくる心臓の音が聞こえてしまわないか心配になる。
「ほしへるほ」
え?あー、始めるのね。
てか、これどうなるのが正解なんだ?
たくさん食べたほうが勝ち?長く折りとったら勝ちなのか?なんならチューしたら勝ちとか!?いや、負けか?
「んんふふ、ふふ」
すぐ目の前にあるかずくんの瞳が楽しそうに細められる。キレイな瞳。俺は一旦思考停止して、ただただ見入ってしまった。
あの約束の日を思い出した。
まだ幼いかずくんにキスをした。約束のキス。
泣いていたかずくんが、俺の「お嫁さんになる?」という言葉に「うん」と頷いてくれた姿がオーバーラップする。
ダメだ。キスしたい。
もうしてしまおうか。してしまえ。
いいよな?こんなゲーム仕掛けてくるんだ、しちゃう事も想定してるよな?
俺はもう一口分顔を近づけた。
あと少し……。
「あっ」
かずくんが突然口を離してしまった。
ええぇ、なんでだよ。俺はポッキーを咥えたままボーゼンとした。もうちょっとだったのに。
「なんか、前にもこんなことなかったっけ…」
かずくんが考え顔でつぶやいた。
え。もしかして、思い出した?あの約束を思い出してくれたの?
俺は期待と緊張で全身固まってしまって、息まで止まりそうだ。
「あ!そうだ、あれだ」
「え、え、なに?」
「ほら、相葉くんが俺に食べてた飴をくれた時。キャンプに行って道に迷った時くれたじゃん」
俺は一気に脱力した。
口からポッキーが落ち、ガックリと肩を落とした。
あったね、そんなこと。小学生の頃、俺が食べていた飴をかずくんの口に入れてあげたな。
あれも口移しみたいなものだから、チューしたっちゃあしたようなもんかもしれないけどさ。
そっちじゃないんだよな。
「あん時俺、自分の飴丸飲みしちゃってさ…って、え?なに、どーしたの?」
落ち込む俺に気づいたかずくんが、不思議そうに顔を覗き込んでくる。俺は急に恥ずかしくなって顔を上げられなかった。だから下を向いたままボソッと言った。
「……俺の勝ち」
「へ?」
「俺のが長くポッキー咥えてたから俺の勝ちっ」
「えぇー、今のナシ!ねぇ、ナシぃ!」
ごねるかずくんとしばらくわちゃわちゃ揉めた。
いいんだ、これで。俺はあきらめない。
そう、俺の辞書に「諦める」という言葉は無いのだ!へこたれるな、俺!
いつか必ず思い出してくれるさ。
「ねぇ、もっかいしよ?」
…………ズルい。
最高に可愛い上目遣いで、そんなこと言って。
ほんとにこいつは俺の事どーしたいんだ。
聞きようによってはなかなかなパワーワードだぞ、それ。他所で言ってないだろな。
なんて考えながらも鼻の下が伸びる俺。
いそいそと次のポッキーをとりだすのだった。
おしまい♡
………いいのかこれで(๑¯∇¯๑)ハハハ←
こんな辺境まで読みに来て下さる方へ
まーくんからのばれんたいん小話でした♡♡